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日本新薬とサレプタ社によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬を巡る米国特許紛争 ― サレプタ社特許は有効、ビルテプソ®の販売で115百万ドルの損害賠償を認める陪審評決 ―

2024年12月23日、日本新薬(Nippon Shinyaku)は、デラウェア州連邦地方裁判所において、2024年12月16日から20日まで行われた公判の結果、サレプタ社(Sarepta Therapeutics)が西オーストラリア大学(The University of Western Australia:UWA)からライセンスを取得した特許は有効であり、日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬ビルテプソ®(Viltepso®)の販売行為に基づき、サレプタ社の損害額が115.2百万ドルであるとの評決が下されたことを発表しました。

あわせて、日本新薬の特許は無効であるとの陪審評決も下されました。

参照:

2021年7月14日の日本新薬のプレスリリース(「サレプタ社に対する訴訟の提起について」)やサレプタ社の発表等によると、日本新薬は、2021年7月14日、サレプタ社に対し、デラウェア州連邦地方裁判所に以下の3つの訴訟を提起していました。

  • サレプタ社が2021年6月21日に行った日本新薬のアンチセンス核酸医薬品技術関連特許(NS特許:米国特許番号9,708,361、10,385,092、10,407,461、10,487,106、10,647,741、10,662,217、10,683,322)に対する無効審判請求(IPR請求)は、2020年6月1日に両社間で締結した相互秘密保持契約に違反することを主張とする、その請求の仮差止命令申立
  • サレプタ社のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬VYONDYS 53®に対する、NS特許に基づく特許権侵害訴訟
  • サレプタ社がライセンスを取得したUWA特許(米国特許番号9,994,851、10,227,590、10,266,827)は無効であり、ビルテプソ®を発見したのは日本新薬とその共同研究先の研究者であり、その発見はサレプタ社の知的財産には依存していないことを主張とする、ビルテプソ®のUWA特許に対する非侵害確認訴訟

この日本新薬の訴訟提起に対して、サレプタ社は、UWA特許に基づき、日本新薬のビルテプソ®の販売行為は侵害であると主張して、反訴を提起しており、両社は互いに特許権侵害や契約違反を主張し合う、混沌とした特許紛争に発展していました(2021.07.15 ブログ記事参照: 日本新薬とSarepta(サレプタ社) アンチセンス核酸医薬品技術及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(ビルテプソ(Viltepso)®とVyondys 53®)を巡る特許紛争が勃発)。

日本新薬とSarepta(サレプタ社) アンチセンス核酸医薬品技術及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(ビルテプソ(Viltepso)®とVyondys 53®)を巡る特許紛争が勃発
ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体のエクソン53部分に結合することでエクソン53をスキップさせ、機能するジストロフィンタンパクを発現させるアンチセンス核酸医薬品技術及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬を巡り、競合する日本新薬とSarepta Therapeutics社(以下「サレプタ社」)の間で特許紛争が米国で勃発しました。 アンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬と...

日本新薬は、今回の陪審評決に関する対応として、陪審審理後の申立てや提訴を含むあらゆる選択肢を検討していくとのことで、今回の評決結果は、ビルテプソ®の販売及び日本新薬が進めている他のエクソンスキッピング等の開発に影響を及ぼすものではないと伝えています。

参考:

  • ビルテプソ®(Viltepso®)は、ビルトラルセン(viltolarsen)を有効成分とする注射剤であり、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療を目的として日本新薬と国立精神・神経医療研究センターで共同創製し、日本新薬で開発したモルホリノ構造を有するアンチセンス核酸で、ビルトラルセンは、ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体のエクソン53部分に結合することでエクソン53をスキップさせ、機能するジストロフィンタンパクを発現させます。2020年3月25日に「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」を効能・効果として日本で承認され、米国では、2020年8月12日に承認されました。
  • Vyondys 53®は、golodirsenを有効成分とする注射剤であり、ビルトラルセンと同種のアンチセンス核酸医薬です。2019年12月12日に、「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」の適応で、サレプタ社が米国で承認を取得しました。

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