2025年1月30日付の日本新薬のプレスリリース「サレプタ社との日本訴訟終了についてのお知らせ」によると、日本新薬とサレプタ・セラピューティクス社(Sarepta Therapeutics, Inc.、以下「サレプタ社」)との間で争われていた日本における特許権侵害訴訟(以下「本件訴訟」)は、同日予定されていた判決期日において、サレプタ社が請求を放棄する旨を陳述したことにより終了しました。
本件訴訟は、サレプタ社が2023年6月5日に東京地方裁判所に提起したもので、日本新薬によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤「ビルテプソ®」の生産・販売・輸出等の行為が、サレプタ社の特許権(特許第6406782号)を侵害すると主張し、損害賠償を求めたものです。
これに対し、日本新薬は、サレプタ社の特許が無効であり、日本新薬の行為は特許権を侵害していないと主張していました。
なお、米国でも、日本新薬とサレプタ社との間で特許紛争が勃発しています。ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体のエクソン53部分に結合することでエクソン53をスキップさせ、機能するジストロフィンタンパクを発現させるアンチセンス核酸医薬品技術及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬を巡り、互いの製品が、それぞれが保有するアンチセンス核酸医薬品技術に関連する特許権に対して問題を抱えている構図となっているようで、最近では、以下の記事のとおり、米国での訴訟に進展がありました。
- 2025.01.06 ブログ記事 「日本新薬とサレプタ社によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬を巡る米国特許紛争 ― サレプタ社特許は有効、ビルテプソ®の販売で115百万ドルの損害賠償を認める陪審評決 ―」
日本新薬とサレプタ社によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬を巡る米国特許紛争 ― サレプタ社特許は有効、ビルテプソ®の販売で115百万ドルの損害賠償を認める陪審評決 ―
2024年12月23日、日本新薬(Nippon Shinyaku)は、デラウェア州連邦地方裁判所において、2024年12月16日から20日まで行われた公判の結果、サレプタ社(Sarepta Therapeutics)が西オーストラリア大学(The University of Western Australia:UWA)からライセンスを取得した特許は有効であり、日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィ...
参考:
- ビルテプソ®(Viltepso®)は、ビルトラルセン(viltolarsen)を有効成分とする注射剤であり、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療を目的として日本新薬と国立精神・神経医療研究センターで共同創製し、日本新薬で開発したモルホリノ構造を有するアンチセンス核酸で、ビルトラルセンは、ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体のエクソン53部分に結合することでエクソン53をスキップさせ、機能するジストロフィンタンパクを発現させます。2020年3月25日に「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」を効能・効果として日本で承認され、米国では、2020年8月12日に承認されました。
- Vyondys 53®は、golodirsenを有効成分とする注射剤であり、ビルトラルセンと同種のアンチセンス核酸医薬です。2019年12月12日に、「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」の適応で、サレプタ社が米国で承認を取得しました。
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