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生物多様性条約(CBD)第16回締約国会議(COP16)が閉幕 遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の利益配分に関する多国間メカニズムとして「カリ基金」設立へ

>前回2022.12.20記事「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15) 遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の使用から得られる利益が公正かつ衡平に配分されるべきであることに合意、多国間メカニズム構築へ」からのつづき

2024年10月21日から11月1日まで、コロンビア・カリにて、生物多様性条約(CBD)第16回締約国会議(COP16)、カルタヘナ議定書第11回締約国会合(CP-MOP11)、および名古屋議定書第5回締約国会合(NP-MOP5)が開催されました。

日本からは外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省から代表団が出席し、COP16のハイレベルセグメントには松澤環境省地球環境審議官が参加しました。

今回のCOP16では、特に「遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)」に関する利益配分の仕組みについて重要な決定が行われました。

DSIとは、遺伝資源から得られたDNA塩基配列などの遺伝情報をデジタル化したもので、医薬品や農業分野での研究や産業利用が進んでいます。

この利用により特定国の遺伝資源を基にした利益が国外に流出するケースが増えているため、各国で利益配分の仕組みが求められていました。

そこで、前回のCOP15では、こうしたDSIに関する利益配分のための多国間メカニズムの導入が決定されました。

今回のCOP16では、この多国間メカニズムのもと、DSIから利益を得る業界(例:医薬品やバイオテクノロジー)の使用者が、その利益の一部をグローバル基金「カリ基金(the Cali Fund)」に拠出することを締約国が推奨し、この基金は生物多様性条約の目的達成のために活用されることが決まりました。

なお、拠出率や対象となる企業規模の詳細については、次回のCOP17までにさらに検討が進められる予定です。

提出された決定文書(参照: CBD/COP/16/L.32/Rev.1 Digital sequence information on genetic resources)には、附属書が添付されており、DSIの利用から生じる利益を公平かつ公正に共有するための多国間メカニズム(カリ基金を含む)の運用方法についてまとめられています。

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附属書の主なポイントは以下のとおりです。正式には原文を参照ください。

  1. メカニズムの対象範囲:公開されているDSIで、アクセス時に特定の契約条件がなく、他の利益配分制度でカバーされていないものに適用されます。[Annex 1]
  2. 金銭的な貢献:DSIを利用して商業的利益を得る企業は、企業規模に応じて収益や利益の一部をグローバル基金に拠出する必要があります。拠出率の仮目安として、利益の1%または収益の0.1%が提案されており、詳細は次回会合(COP17)で決定される予定です。[Annex 3 and 4]
  3. 非金銭的な利益共有:非金銭的利益共有に関して、特に、技術支援や先住民、地域コミュニティへの支援の重要性が述べられています。これは、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の目標に沿った支援です。[Annex 6, 7 and 8]
  4. データベース運営者の責務:DSIを公開しているデータベースの運営者が、利用者に利益共有メカニズムを通知し、データの出所を記録・提供する責任について触れています。[Annex 10, 11 and 12]
  5. 基金の運営:グローバル基金の使用方法や、資金が支援対象となる地域やコミュニティについて具体的に説明されています。国連の管理下で行われることも明記されています。[Annex 18, 19, 20, 21, 22 and 23]
  6. 国内外の利益配分制度との整合性:メカニズムが各国の利益配分制度と整合性を保つことや、他の利益配分制度と連携するようことが奨励されています。[Annex 26 and 27]
  7. レビューと監視:COP18およびその後の会合で、このメカニズムの効果が評価され、必要に応じて改善が行われることが述べられています。また、運営支援のための委員会設置に関する記述もされています。[Annex 29, 30 and 31]

参考:

生物多様性条約第15回締約国会議(COP15) 遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の使用から得られる利益が公正かつ衡平に配分されるべきであることに合意、多国間メカニズム構築へ
>前回9/20記事「生物多様性条約・名古屋議定書で定める遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS): 「遺伝資源」にデジタル配列情報(DSI)は含まれることになるのか」から続く 2022年12月7日から19日まで、カナダ・モントリオールにおいて、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部が開催され、「ポスト2020生物多様性枠組」の採択に向けた最終的な交渉が行われました。...

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