公正取引委員会は、2024年7月26日、ASP Japan合同会社(以下「ASP」)に対して独占禁止法の規定に基づく排除措置命令(令和6年(措)第9号)を行ったことを発表しました。
参照:
- 2024.07.26 公正取引委員会: ASP Japan合同会社に対する排除措置命令について
- (印刷用)(令和6年7月26日)ASP Japan合同会社に対する排除措置命令について
- (令和6年7月26日)本件の概要
- (令和6年7月26日)参考1-2(過去の抱き合わせ販売等事件及び参照条文)
- (令和6年7月26日)別添(排除措置命令書)
ASPが行っていた内視鏡洗浄消毒器「エンドクレンズNeo」等と消毒剤「ディスオーパ」(フタラール製剤)のセット販売が、独占禁止法第19条(不公正な取引方法第10項:抱き合わせ販売)に違反すると判断されました。
公正取引委員会によると、医薬品販売大手のジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(以下「J&J」)は、同社の消毒剤「ディスオーパ」を保護する特許権(推定:特許2574391)の存続期間満了(2013年4月)に伴い、後発の安価なフタラール製剤の使用による「ディスオーパ」の売上減少を防ぐため、容器に二次元コードを貼付した「ディスオーパ」とそれのみに反応するバーコードリーダーを搭載した内視鏡洗浄消毒器を販売しました。
2019年、これら事業を承継したASPは、この方針を引き継ぎ、医療機関に対し、「ディスオーパ」及び本件内視鏡洗浄消毒器を販売していました。
参考:
- 2019.04.02 J&J press release: ジョンソン・エンド・ジョンソン、 Fortive Corporationへの Advanced Sterilization Products(ASP)事業譲渡を完了
- ASPホームページ エンドクレンズ™ の製品特徴には、「ディスオーパ™の製造番号や使用有効期限を本体に登録できます。高度な消毒剤管理とハイレベルな業務マネジメントを実現。※専用バーコードと履歴システムを併用することで内視鏡の消毒に使用したディスオーパ®を把握可能。」と紹介されています。
公正取引委員会は、この行為が医療機関の選択肢を不当に制限していると判断し、ASPに対し、セット販売の取りやめや再発防止策を講じるよう命じました。
なお、J&Jは、公正取引委員会の調査を受けましたが、既にこれら事業から撤退しているため処分対象とはなりませんでした。
一方、ASPは、この排除措置命令に対して、同日付のプレスリリース(「公正取引委員会による排除措置命令について」)で、バーコードリーダーによるバーコード読み取りは、内視鏡消毒の十分性を確保し、患者様の健康と安全を守るために重要な手段であると述べ、同社の行為が正当であり、患者様の健康と安全を守るために不可欠なものであることを一貫して公正取引委員会に説明してきたと強調しました。
さらに、同社は本命令を受けたことの重大性を認識しつつも、公正取引委員会の事実認識および法解釈に基づく本命令に同意できないとし、本命令の取消しを求める法的手続きを検討すると述べています。
後発医薬品排除に関して公取委が排除措置命令を発出するのは初めてらしいぞ。
患者様の健康と安全のために工夫して開発した消毒剤の品質等管理機能が医療機関で役に立ち続けてきた・・・のだとしたら、ASPにとって、この命令は不本意ですね。ASPは争う姿勢を見せています。
後発医薬品との関係もあるし、知的財産権の観点でも興味が沸くな。
重要な手段というのなら、消毒剤容器に添付したバーコードを読み取って消毒剤の品質等の十分性を確保するような方法の特許やそのような工夫をしたフタラール製剤の容器といった特許をASPは持っているのでしょうか・・・。
健全な知的財産権による競争が後発フタラール製剤の排除の背景にあったのならまた違っていたのかな。
バーコード無しの後発フラタール製剤も使用できるように内視鏡洗浄消毒器を仕様変更するのは結構たいへん、時間がかかるかもしれませんね。「ディスオーパ」しか使用できないという本件内視鏡洗浄消毒器(エンドクレンズNeo等)を使っている医療機関は、「ディスオーパ」をしばらく購入できないとなれば、内視鏡の洗浄に困るかも。代替手段を検討しなければならないとすれば、医療への影響は大きいかもしれませんよ。医療機関はどうすればよいのでしょうか、ピポ先輩~?
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