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【速報】厚生科学審議会(医薬品医療機器制度部会) パテントリンケージ制度の運用改善について議論 医薬品特許の専門家への意見照会制度の導入検討へ

2024年7月25日に開催された厚生科学審議会(医薬品医療機器制度部会)において、「後発医薬品等の承認審査におけるパテントリンケージ制度の運用改善」が議題として取り上げられました。

厚生労働省は、後発医薬品の承認審査に際し、二課長通知に基づいて先発医薬品の特許との関係性を確認しています(パテントリンケージ制度)。しかし、特許権の効力範囲に関する裁判例や確立した学説が少ないため、当事者間で見解の相違が生じることがあり、司法判断を参照せずに特許との関係性を確認することが難しいケースがあります。このような背景から、今回の厚生科学審議会において、厚生労働省医薬局(事務局)より、以下の事項を検討するための研究班を設置し、医薬品特許や薬事規制に詳しい学識経験者の協力を得て、関連する国内外の文献情報や裁判例、学説等を調査・分析することが提案されました。

  • 後発品(特にバイオ後続品)の承認審査で考慮される、先発品の「物質特許」及び「用途特許」の定義・範囲
  • 特許抵触の有無を確認するための手続きや後発品の承認可否判断の基準
  • 医薬品特許の専門家の意見を反映させる仕組み

また、この調査研究の成果をもとに、バイオ後続品も含めたパテントリンケージ制度の改善のため、承認審査において考慮すべき特許の範囲等を明確化した上で、専門家への意見照会制度の導入について、検討を進めることとしてはどうかということも提案されました。

出典: 2024年7月25日開催 令和6年度第5回 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会 資料3, p14

この議題に関し、事務局から資料に基づく説明がありました。他の議題に対しては委員から活発な意見や質問が出たのに対し、本議題については委員からの発言が全く無く、この方向性で進めることが了承されました。

参照:

ピポ
ピポ

委員のみなさんは、問題の本質を理解できているのだろうか・・・。「専門家に意見照会する」と説明されたら、誰だってそれがいいって思っちゃうよな。

ミャオ
ミャオ

ピポ先輩~。まあ、「制度の導入」を「検討する」ってことだから、研究班でその是非も議論されるんでしょうね。研究班にはきっとステークホルダーである製薬企業側にも参加要請があるはずですよ。

ピポ
ピポ

厚生労働省が言っているように、特許抵触の判断は裁判所がするものだよな。でも、知財高裁の令和5年5月10日の判決って、結局、厚生労働省がその後発医薬品を承認しないって判断したからじゃない?「専門家への意見照会制度」を導入しても、この判決で明らかになった問題は解決しないと思うんだ。正直、厚生労働省が「専門家への意見照会制度の導入」を進めるのは、責任を第三者に押し付けて逃れようとしているようにしか見えないぞ。

ミャオ
ミャオ

ピポ先輩~。厚生労働省も制度に問題があると認識しているからこそ、今回重い腰を上げて何とかしようとしているんじゃないですか~。前向きに知恵を出し合いましょうよ。

ピポ
ピポ

厚生労働省は特許無効審判請求の審決結果も参考にしているんだから、専門家を設置する必要はないんじゃないか?後発メーカーには特許庁の判定を求めさせて、厚生労働省はその結果を利用すればいいのでは?透明性と一定の公平性(専門性)もあるわけだし。

ミャオ
ミャオ

そうですね。でも、一番判断が難しい延長された特許権の効力については、特許庁は判定で判断しないって言ってますよ。この場合、特許庁の判定に頼ることはできないですね~ピポ先輩。

ピポ
ピポ

それなら、延長された特許権の効力も判定制度で判断できるように法改正を検討するのも選択肢なのでは?パテントリンケージについて厚生労働省は特許庁に協力を要請する気はないのかな・・・。結局、制度を法律で明確にしない限り、判断の公平性、透明性、一貫性が担保できないぞ。

ミャオ
ミャオ

そういえば、厚生労働省が特許庁とこの話題で何か議論しているとか協力しているって話は聞いたことがないですね・・・。縦割り行政ってことなんでしょうか。実は見えないところで仲良しなのかもしれませんね、ミャオとピポ先輩みたいに。

ピポ
ピポ

・・・

参考: 日本のパテントリンケージに関するブログ記事

2023.05.10 「ニプロ v. エーザイ」 知財高裁令和4年(ネ)10093 特許権侵害差止請求権等の不存在確認請求控訴事件(エリブリンメシル酸塩事件) - 法治主義に反する状況? 問われる日本版パテントリンケージ制度 -
>原判決記事 1.はじめに 本判決(知財高裁令和4年(ネ)10093)は、抗悪性腫瘍剤ハラヴェン®(有効成分: エリブリンメシル酸塩)の後発医薬品の承認申請を行ったニプロ(控訴人)が、エーザイ(被控訴人)が有する本件各特許権による差止請求権及び損害賠償請求権の不存在確認、並びに当該医薬品が本件各発明の技術的範囲に属しないことの確認を求めた控訴審判決である。 知財高裁は、ニプロの後発医薬品の製造販売...
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コメント

  1. Fubuki Fubuki より:

    【参考情報】
    令和6(2024)年5月16日 令和6年度第2回 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 参考資料2
    業界からの要望事項にて、日本製薬工業協会が、後発医薬品およびバイオ後続品の特許抵触の確認に関する(パテントリンケージ制度)の改善を要望している。
    「当協会から、2022年12月5日付で、後発医薬品の承認申請がなされた事実を開示すること、および/または先発品企業と後発品企業の当事者同士による事前の調整を後発医薬品の薬事承認審査中に実施することを要望する旨の意見を提出した。この後、2023年8月から9月にかけて、二課長通知の改正案が示され、意見交換を行っている(2023年9月22日付当協会意見提出済み)が未だ結論に達していない。」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001254403.pdf
    https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001254411.pdf
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40241.html

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