2024年2月19日、科研製薬による「エフィナコナゾール(クレナフィン®爪外用液10%)に関する特許権等について」の謹告文が掲載されました。
- 2024.02.19 日刊薬業: 【謹告】エフィナコナゾール(クレナフィン®爪外用液10%)に関する特許権等について
クレナフィン®爪外用液10%は、科研製薬において創製された新規トリアゾール系化合物であるエフィナコナゾール(efinaconazole)を有効成分とする日本初の外用爪白癬治療薬であり、2014年7月4日、爪白癬を適応症とする効能又は効果として承認されました。
1.科研製薬が保有する特許権
科研製薬は、クレナフィン®爪外用液10%に関して、用途、製法及び製剤に関する特許権、並びに、容器に関する特許権又は意匠権を保有しており、これら権利は有効に存続しているとのことです。
なお、再審査期間(8年間: 2014年7月4日~2022年7月3日)は終了していますので、クレナフィン®爪外用液10%の独占期間はそれら特許権又は意匠権の満了日のいずれかに依存することになります。
(1)爪真菌症治療剤としての用途
- 特許第4414623号。 4年7月6日の存続期間延長登録により満了日は2025年2月17日。現在、沢井製薬により無効審判が請求されています(無効2023-800002)。
(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-(4-メチレンピペリジン-1-イル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-2-オールまたはその塩を有効成分として含有する外用爪真菌症治療剤。
(2)エフィナコナゾールの製造法
(3)エフィナコナゾールの製剤
(4)容器
- 特許第6005344号。満了日は2031年7月5日。現在、無効審判は請求されていないようです。
開口部を有する液剤容器と、
合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部材と、
を有し、
前記柱状刷毛部材が、
繊維径7~50μmの範囲の合成繊維を、0.25~0.50の密度の範囲に束ねて成形され、
集束された複数の合成繊維に接着剤が含浸されて柱状に成形された合成繊維束を、研削してなり、
前記接着剤が、前記合成繊維束の外周部に多く偏在し、
前記合成繊維束の先端部が、前記合成繊維束の少なくとも一端の外周部を全周に亘って研削してほぐされ、
前記合成繊維束の先端部の一部もしくは全部の合成繊維が、使用の際の接触応力により動き、
前記液剤容器と前記柱状刷毛部材との間に、筒状本体と底部とを有する有底筒状保持具を有し、
前記有底筒状保持具が、前記液剤容器の開口部に挿入され、
前記有底筒状保持具の底部が、少なくとも一つの細孔を有し、
前記柱状刷毛部材が、前記有底筒状保持具の筒状本体内部に挿入され、
前記柱状刷毛部材のうち前記液剤容器の外部にある先端部分が、柱軸長手方向に対して垂直横方向に広がる扇状であり、
前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の厚みが、前記柱状刷毛部材の先端に近づくに従って、柱軸長手方向に対して垂直縦方向に小さくなることを特徴とする、爪白癬薬用塗布具。
- 登録意匠第1437737号。科研製薬、ぺんてる、オーベクス、前田産業の共有。満了日は2032年3月9日。現在、無効審判は請求されていないようです。
本物品は、塗布具と容器本体を備えた塗布具付きの包装用容器である。なお塗布具には合成繊維を束ねて柱上に成形した刷毛部材を有し、その先端は扇状になっている。容器本体には液剤を格納し、容器本体内より滲み出させた液剤を、刷毛部材の先端を用いて塗布するものである。
【意匠の説明】
本物品の大きさは正面図において高さ約65mm、刷毛部材のうち容器本体から露出している先端部分の長さ約8mm、底面図において容器本体の直径約22mmである。
【図面】
【正面図】
2.ボシュ社が保有する特許権
また、ボシュ・ヘルス・アイルランド・リミテッド(以下「ボシュ社」)は、本剤の製剤等に関する特許権を保有しており、これらの権利は有効に存続しています。現在、いずれも無効審判は請求されていないようです。
科研製薬は、ボシュ社より、これらの特許権の実施許諾を受けており、これら特許権に対する侵害行為等への法的手段の行使について一任されているとのことです。
- 特許第5623913号。満了日は2028年12月30日。
- 特許第5872656号。満了日は2028年12月30日。
- 特許第6516759号。満了日は2034年10月2日。
- 特許第6774518号。満了日は2034年10月2日。
- 特許第6611014号。満了日は2034年11月24日。
3.クレナフィン®爪外用液10%のパテントクリフはいつ?
2024年2月、科研製薬の子会社・科研ファルマが、クレナフィン®爪外用液10%にとって初となる後発医薬品の承認を取得しました。
これは、オーソライズド・ジェネリック(AG)であると報じられました(ミクスonline)。
科研製薬は、とうとう後発医薬品の参入への対抗策を講じたわけです。
AGではないクレナフィン®爪外用液10%の後発医薬品については、科研製薬が保有する爪真菌症治療剤としての用途特許(特許第4414623号)に係る特許権の満了日(2025年2月17日)が経過した後、つまり、年2回の後発医薬品の承認タイミングを踏まえれば、早くとも2025年8月に承認され、したがって同年12月に薬価収載・販売される可能性があります。
現在、沢井製薬が当該特許に対して無効審判を請求していますが、特許庁は、特許権者(被請求人)である科研製薬に訂正の機会を与える審決の予告はせずに、2024年1月に審理終結通知書を発出したことから、現在のところ、科研製薬に有利な方向で審決に至ろうとしていると推測されます。
その他の製法、製剤、容器に関する権利が後発医薬品参入障壁として有効かは不明です。
クレナフィン®爪外用液10%の日本での売上は、2023年で17,985百万円でした(科研製薬 2023年05月11日 2023年3月期決算 決算説明会)。
クレナフィン®は科研製薬の主力製品。後発品参入は脅威ですね。
コメント
【追加情報】
特許第4414623号に対して沢井製薬により無効審判が請求されましたが(無効2023-800002)、2024年2月7日、以下の結論で審決に至っていました。
そして、J-PlatPatによると、知財高裁へ審決取消訴訟が提起されているようです(出訴事件番号(令06行ケ10022) 出訴日(2024/03/11) 知的財産高等裁判所 第1部)。
4年7月6日の存続期間延長登録により満了日は2025年2月17日。
「特許第4414623号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」
【請求項1】(訂正発明)
(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-(4-メチレンピペリジン-1-イル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-2-オールまたはその塩を有効成分として含有する外用爪真菌症治療剤であって、爪真菌症が爪白癬である、前記治療剤。