1.4度目の謹告「リバーロキサバンに関する特許権について」
2022年7月22日、バイエル薬品より「リバーロキサバンに関する特許権について」の謹告文が掲載されました(2022.07.22 日刊薬業 【謹告】リバーロキサバンに関する特許権について)。
リバーロキサバン(rivaroxaban)は、Bayer社で開発された選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤イグザレルト®(Xarelto®)の有効成分です。
バイエル薬品は、リバーロキサバンを有効成分とする「イグザレルト®錠10mg/15mg」、「イグザレルト®細粒分包10mg/15mg」、「イグザレルト®OD錠10mg/15mg」、および「イグザレルト®ドライシロップ小児用51.7mg/103.4mg」を日本で製造販売するとともに「イグザレルト®錠2.5mg」の製造販売承認を取得しています。
リバーロキサバンに関する特許権侵害に対する注意喚起を促すバイエル薬品からの謹告の掲載は、今回で4度目。
2020年12月4日(過去記事)、2021年6月28日(過去記事)、2022年2月1日(過去記事)に続いて前回謹告と同じ内容を繰り返すものとなっています。
「当社は、リバーロキサバンを有効成分とする製品を保護する特許として、日本特許第4143297号、第4852423号、同第5147703号、同第5311742号、および同第5416408号の5件の特許を保有しており、そのうち同第4143297号、同第4852423号および同第5311742号については、特許延長登録を取得済み(さらに新たな特許延長登録出願も係属中)です。
当社は、これら特許および特許延長登録は有効であると共に、実効性があるものと確信しております。
とくに、有効成分リバーロキサバンにかかる特許第4143297号の特許存続期間は5年延長されております点には是非ご留意ください。」
2.今後の展開について
特に、有効成分リバーロキサバンの物質特許第4143297号に係る特許権の存続期間は、適応症追加と剤形追加といった各承認に基づき短冊的に延長登録されています(詳細は下記の記事参照)。
- 2022年2月1日記事: 選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤「イグザレルト®」・・・リバーロキサバンに関する特許権について(3)
- 2021年6月28日記事: 選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤「イグザレルト®」・・・リバーロキサバンに関する特許権について(2)
- 2020年12月4日記事: 選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤「イグザレルト®」・・・リバーロキサバンに関する特許権について
ジェネリックメーカーは、その延長された特許権の効力の間隙を突いてイグザレルト®のジェネリック医薬品の製造販売承認取得に向けて申請しているのでしょうか。
例えば、イグザレルト®のOD錠承認に基づいて延長された物質特許権(第4143297号)の存続期間は、20年の満了日である2020年12月11日に1年6月21日延長分を加えた2022年7月までとなっています。
従って、イグザレルト®のジェネリックOD錠が8月に承認されるという可能性があります。
仮に、イグザレルト®のジェネリックOD錠が8月に承認された場合、「最初のイグザレルト®普通錠の承認に基づいて延長された物質特許権の効力は剤形違いであるジェネリックOD錠にも及ぶ」とバイエル薬品が主張して特許権侵害訴訟を提起したら、裁判所はどのように判断するのでしょう。
物質特許権の延長効力が剤形違いのジェネリック医薬品に及ぶのかどうかという大変興味深い論点について裁判所の判断が期待されます。
しかし、そもそも、裁判所での争いとなる前に、ジェネリック医薬品が承認されるわけですが、厚生労働省/PMDAがこのような高度且つ不透明な延長特許権の効力範囲を解釈・判断できるとは到底思えません。厚生労働省/PMDAは、パテントリンケージを適切に運用することができるのでしょうか。
2022年2月17日付のミクスOnline「バイエルホールディング イグザレルト後発品はAG 子会社が承認取得」によると、バイエルホールディング100%子会社のバイエル薬品販売が2022年2月15日に承認を取得したイグザレルト®の初のジェネリック医薬品は、バイエルホールディングがAG(オーソライズド・ジェネリック)であること明らかにしたとのことです。
8月に予定されているジェネリック医薬品の承認時期が迫っています。
果たして、その中にイグザレルト®のジェネリック医薬品はあるのでしょうか。
コメント
2023.02.01【謹告】リバーロキサバンに関する特許権について(日刊薬業より)
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5度目の謹告文の掲載となります。