中外製薬が販売する骨粗鬆症治療剤エルデカルシトール ソフトカプセル(日本では商品名エディロール®カプセルとして販売)に相当する後発医薬品を温州海鶴薬業が中国にて販売許可申請したことに対して、中外製薬が、中国改正専利法第76条に基づき、中外製薬の中国特許の保護範囲に属することの確認を求める訴訟を提起していた、医薬品パテントリンケージ制度施行後初めてとなる特許訴訟事件において、2022年4月15日、北京知識産権法院は、温州海鶴薬業の後発医薬品は中外製薬の特許保護範囲に含まれないと判断したようです。
参考:
- Weibo(微博)の北京法院ニュースサイト・京法网事に、同日、北京知識産権法院が寄稿した記事: 全国首例药品专利链接诉讼案件宣判
上記の京法网事の記事に基づいて中国のメディアも報じています。
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2021年6月1日より中国第4次改正専利法が施行され、医薬特許紛争の早期解決メカニズム(early resolution mechanisms for drug patent disputes)、いわゆるパテントリンケージ制度(第76条)、が導入されたことは、医薬品業界にとっては大きなニュースでした(2021.07.07 記事参照: Patent linkage in China – 中国国家知識産権局(CNIPA)が医薬特許紛争の早期解決メカニズム(early resolution mechanism for drug patent disputes)いわゆるパテントリンケージ(patent linkage)に関する実施弁法を発表 –)。
パテントリンケージとは、後発医薬品承認時に先発医薬品の有効特許を考慮する仕組みであり、その制度内容は国によって異なりますが、その意義は総じて、先発医薬品を保護する特許権の重要性を尊重しつつ先発医薬品メーカーと後発医薬品メーカーとの特許紛争を事前に整理することによって、後発医薬品の市場への安定供給を実現することを目的としています。
中国パテントリンケージ制度で特許訴訟事件(一般に「药品专利链接」訴訟案件と呼ばれる)となったのは、温州海鶴薬業が、中外製薬の骨粗鬆症治療剤(活性型ビタミンD3製剤)エルデカルシトール(Eldecalcitol)ソフトカプセル「艾地骨化醇软胶囊」(日本では商品名エディロール®カプセルとして販売)に相当する後発医薬品を、第4.2類声明(後発医薬品は医薬品特許情報登録プラットフォームに登録された関連特許の保護範囲に含まれていない)とともに、販売許可申請したことによるものでした。
中外製薬は、中国改正専利法第76条に基づき、北京知識産権法院に、温州海鶴薬業が申請した後発医薬品が中外製薬の中国特許(中国出願番号: 2005800098777.6、登録番号: CN1938034B)の特許保護範囲に属することの確認を求める訴えを提起しました。
北京知識産権法院は、
「新専利法施行後初めてこの種の案件を受理した(受理了新专利法实施后首例该类型案件。)」
と報じていました(2021.11.11 【收案信息】北京知识产权法院受理首例“药品专利链接”诉讼案件)。
コメント
【関連情報追加】
中国パテントリンケージで中外が争っていた件で最高人民法院判決のニュース。
2022.08.29 Supreme People’s Court Upholds China’s First Patent Linkage Ruling – Decision Released
https://www.chinaiplawupdate.com/2022/08/supreme-peoples-court-upholds-first-patent-linkage-ruling-decision-released/
The case numbers are:
北京知识产权法院(2021)京73民初1438号民事判决书
最高人民法院(2022)最高法知民终905号民事判决书
Expert Opin Ther Pat. 2022 Nov 15;1-7. doi: 10.1080/13543776.2022.2145885.
Weiwei Han, Exploring drug patent linkage and the first ANDA litigation in China
https://doi.org/10.1080/13543776.2022.2145885