モデルナ社が行ったCOVID-19ワクチンのmRNA配列に関する米国特許出願について、モデルナ社と米国国立衛生研究所(NIH)との間で共同発明者を巡り主張が対立していた問題(参考記事: モデルナ社 COVID-19ワクチンのmRNA配列 NIHの科学者が共同発明者であるとの主張を受け入れず、モデルナ社の科学者だけが発明者である旨を表明)で、2021年12月17日、モデルナ社は、現在の状況下でmRNA配列特許を発行することは、NIHとの円満な解決を目指した今後の協議に支障をきたす恐れがあると判断し、また、オミクロン株を含むSARS-CoV-2の新たな亜種に対処するために進行中の重要な官民の取り組みに支障をきたすことを避けたいと考え、NIHとの協議に時間を割くために、米国特許商標庁より許可されていたCOVID-19ワクチンのmRNA配列に関する米国特許出願について、現時点では発行させないことを決定し、継続出願を行った旨を表明しました(2021.12.17 Moredna: STATEMENT ON INTELLECTUAL PROPERTY)。
モデルナ社が出願人であり、発明の名称を「CORONAVIRUS RNA VACCINES」とする米国特許出願番号17/000,215(公開番号US2021-0228707A1)の審査において、確かに、特許許可通知後に登録料を支払っておらず放棄となっています。
※継続出願をしたとのことですので、この出願は手続上「一旦」放棄となりますが、継続出願をすることにより、この出願の優先権は確保したまま、特許権として確定するまでの時間を引き延ばしたということであり、モデルナ社が当該発明に係る特許に向けた権利化を「完全に」放棄したというものではありません。
モデルナ社とNIHとの間で共同発明者の認識は一致に至るのか・・・。見守りたいと思います。
参照:
- 2021.12.17 Moredna: STATEMENT ON INTELLECTUAL PROPERTY
- 2021.11.17 記事: モデルナ社 COVID-19ワクチンのmRNA配列 NIHの科学者が共同発明者であるとの主張を受け入れず、モデルナ社の科学者だけが発明者である旨を表明
コメント
【その後の進展情報追加】
ModernaとNIHとの間で和解したようです。
Moderna Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2022の記載より。
“In December 2022, we entered into a non-exclusive patent license agreement with the National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID), an Institute or Center of the National Institutes of Health (NIH) to license certain patent rights concerning stabilizing prefusion coronavirus spike proteins and the resulting stabilized proteins for use in COVID-19 vaccine products. Pursuant to the agreement, we have agreed to pay low single-digit royalties on future net sales, a minimum annual royalty payment, and certain contingent development, regulatory and commercial milestone payments on a licensed product-by-licensed product basis. In addition, in December 2022, we made a catch-up royalty payment of $400 million to NIAID, which was recorded to cost of sales in our consolidated statements of operations.”
https://www.sec.gov/ix?doc=/Archives/edgar/data/1682852/000168285223000011/mrna-20221231.htm
係属出願も2022年12月に放棄され、その後child出願も無いようです。