SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードするmRNAを有効成分とするワクチンを開発したモデルナ社は、2020年10月8日には、パンデミックの間、COVID-19の知的財産権を行使しないことを宣言しました。さらに、COVAXによる分配へのワクチン提供、アフリカにおける生産工場の建設など、ワクチン・アクセスについてとても精力的に取り組んでいます。
- 2020.10.08 Moderna press release: Statement by Moderna on Intellectual Property Matters during the COVID-19 Pandemic
- 2021.10.08 Moderna press release: Our Global Commitment to Vaccine Access
2021年11月11日、モデルナ社は、アメリカ国立衛生研究所NIHの科学者たちとの協力関係に感謝しており、彼らの貢献を高く評価するとしながらも、COVID-19ワクチンのmRNA配列に関して、NIH(アメリカ国立アレルギー・感染症研究所NIAIDはNIHを構成する研究所の一つであるため、以下、「NIH」と略します。)の科学者が共同発明者であると主張していることについて受け入れることは出来ず、モデルナ社の科学者だけが発明者である旨を表明しました。
- 2021.11.11 Moderna press release: Statement on Intellectual Property
さらに、モデルナ社は、NIHとの紛争を解決するために、モデルナ社の科学者のみを発明者とするそれら特許出願を政府との共有にすることを既に提案したとのことです。
モデルナ社が出願人であり、発明の名称を「CORONAVIRUS RNA VACCINES」とする米国特許出願番号17/000,215(公開番号US2021-0228707A1)の審査において、2021年7月28日に提出されたレター(Letter specifying the conditions for filing under 37CFR1.97)の記述から、モデルナ社とNIHとの間で共同発明者に関する認識の相違があったことが伺えます。
当該出願は、SARS-CoV-2のプロリン変異を有する安定化スパイクタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを持つmRNAをクレームしています。
出願人による審査対応書類(2021年5月10日)には、
SEQ ID NO:29 comprises a double proline (“P”) mutation (K986P and V987P) relative to wild-type SARS-CoV-2 protein
と記述されています。
COVID−19ワクチンモデルナ筋注についての日本での審査報告書(2021年05月21日)によると、原薬である CX-024414は、SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1株由来)の完全長Sタンパク質をコードするmRNAであり、2つのアミノ酸置換(K986P及びV987P)によってSタンパク質が融合前構造に安定化するよう設計されているそうです。
参考:
- Public Citizen: 2021.11.09 Letter Urging NIH to Reclaim Foundational Role in NIH-Moderna Vaccine
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