中外製薬のプレスリリース(2020.11.27 エディロールカプセルに関する特許権侵害訴訟の提起について)によると、2020年11月27日、中外製薬は、骨粗鬆症治療剤(活性型ビタミンD3製剤)エディロール®カプセル0.5μg、同0.75μg(一般名: エルデカルシトール(Eldecalcitol))の後発医薬品に関し、中外製薬が保有する物質特許に基づいて、日産化学に対し、後発医薬品の原薬の原料の生産及び使用の差止め並びにその廃棄を求めるとともに、日産化学、沢井製薬及び日医工に対し、損害賠償を求めて、東京地方裁判所に特許権侵害訴訟を提起したとのことです。また、日産化学に対しては、同時に、特許権侵害差止仮処分の申立てを行ったとのことです。
この手続きにおいて、中外製薬は、沢井製薬及び日医工は、当該原薬の製造を日産化学に委託し、日産化学から当該原薬を購入し使用して、当該後発品を製造し販売していると主張するとともに、日産化学が当該原薬の製造において生産し使用する当該原薬原料は、中外製薬の保有する物質特許第3429432号の特許権を侵害すると主張しています。
エディロール®は、中外製薬が開発した活性型ビタミンD3誘導体であるエルデカルシトールを有効成分とする骨粗鬆症治療剤であり、2011年1月21日に国内製造販売承認を取得しました。エディロール®の2019年度国内売上高は367億円(中外製薬2019年12月期連結決算補足資料より)。エディロール®カプセルの再審査期間は終了しています(~2019年1月20日(8年間))。
2020年2月17日、沢井製薬及び日医工が、中外製薬と大正製薬が販売するエディロールカプセルの後発医薬品の製造販売承認をそれぞれ取得しました。現時点において、沢井製薬及び日医工のみが、当該後発品を上市しています。日産化学は、近年、当該後発品の原薬としてのエルデカルシトールの事業に注力しているとのことです。
ところで、2020年5月29日、中外製薬は、沢井製薬および日医工に対し、中外製薬および大正製薬が保有する用途特許第5969161号を侵害するとして、当該後発品の生産、輸入、譲渡、譲渡の申出の差止め、ならびに廃棄を求め、東京地方裁判所に特許権侵害訴訟を提起するとともに、特許権侵害差止仮処分の申立てを行っています。沢井製薬と日医工は、本件用途特許に対して、2019年12月23日に特許無効審判を請求し(無効2019-800112)、2020年9月24日に審決の予告がなされています。2020年5月29日の中外製薬のプレスリリースに関しては下記記事をご覧ください(中外 エディロール用途特許侵害で沢井・日医工を提訴)。
コメント
2021.01.22 大正製薬・中外製薬 press release: 「骨粗鬆症治療薬「エディロール®」に関する中外製薬と大正製薬の販売提携終了について」
https://www.taisho.co.jp/company/news/2021/2021012201.pdf
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210122150000_1068.html
中外製薬が製造販売承認を有する骨粗鬆症治療薬「エディロール®カプセル0.5 µg、同0.75 µg」に関する販売提携を終了する。中外製薬と大正製薬は、2008年5月にエディロールに関する共同開発・販売契約を締結。2011年4月の同製品の発売より、両社で日本国内における共同販売および情報提供活動を行ってきたが、今後の販売方針について協議した結果、販売提携を終了することとなった。大正製薬によるエディロールの販売および情報提供活動は、2021年4月10日をもって終了となり、2021年4月11日からは、中外製薬が単独で販売および情報提供活動を行うこととなる。
2021.02.16 日医工・沢井製薬が「ビタミンD誘導体結晶およびその製造方法」に関する特許3429432号に対する無効審判を請求(無効2021-800008)