1.アビガン®錠について
ファビピラビル |
アビガン®錠200mg(一般名: ファビピラビル(favipiravir))は、富山化学工業(株)(現:富士フイルム富山化学(株))により研究・創製された低分子の経口抗インフルエンザウイルス薬です。RNAポリメラーゼを選択的に阻害し、抗インフルエンザウイルス活性を示します。
ファビピラビルは、非臨床試験において鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)及びA(H7N9)等に対する抗ウイルス作用が確認されています。最近のインフルエンザを取り巻く状況を鑑みると、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対して、既承認の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なウイルスであり、ファビピラビルの有効性が期待できる可能性のある場合に、ファビピラビルを使用可能な状態にしておくことは意義があると判断され、2014年3月24日に、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」の効能・効果で、商品名「アビガンⓇ錠200mg」として製造販売承認を取得しました。
アビガン®は、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品であり、厚生労働大臣からの要請を受けて製造販売を行うものとされています。
2.アビガン®錠の物質特許(日本)について
富士フイルム富山化学(株)が保有する「含窒素複素環カルボキサミド誘導体またはその塩並びにそれらを含有する抗ウイルス剤 」に関する特許(第3453362号)はアビガン®錠の有効成分であるファビピラビルを保護する物質特許であり、20年の存続期間満了日は2019年8月18日です。
特許3453362号の請求項6及び7:
効能・効果を「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」とする製造販売承認(2014年3月24日)に基づいて、当該特許の存続期間延長登録出願(2014-700070)がされ、5年間の延長登録を受けました。その結果、特許権の存続期間満了日は2024年8月18日となっています。
当該特許の存続期間延長登録において、「処分の対象となった物について特定された用途」は「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症・・・」ですから、当該延長された特許権の効力は当該用途に使用されるアビガン®錠(ファビピラビルを有効成分とする薬剤)の実施以外の行為には及ばないことになります(特許法第68条の2)。物質特許が5年間延長されたから、その延長された特許権の効力がそのまま同じような範囲で及び続ける、というわけではありません。
つまり、例えば、アビガン®錠(ファビピラビルを有効成分とする薬剤)を「新型コロナウイルス感染症」のための薬剤として使用することに対して、当該延長された特許権の効力は及ばないことになります。
アビガン®錠に関連したどのような特許が当該物質特許以外に存在するかは調べておりませんが、当該物質特許のみということであれば、アビガン®錠(ファビピラビルを有効成分とする薬剤)を「新型コロナウイルス感染症」のための薬剤として使用する行為について、日本において障壁となる特許権は無いということになる、と考えられます。
参考:
- 富士フイルム富山化学(株) ウェブサイト: アビガン錠に関する情報
- アビガン錠「医薬品インタビューフォーム」
- 2014.03.24 富士フイルムホールディングス(株) press release 「抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の日本国内での製造販売承認取得のお知らせ」
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