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2018.10.11 「エヌ・エル・エー v. 東洋新薬」 知財高裁平成29年(行ケ)10212

黒ショウガ成分含有組成物知財高裁平成29年(行ケ)10212

【背景】

東洋新薬(被告)が保有する「黒ショウガ成分含有組成物」に関する特許権(第5569848号)の無効審判(無効2015-800007)請求不成立の審決取消訴訟。第一次審決(原告の無効審判請求に対して不成立とした審決)を取り消した前訴判決(2017.02.22 「エヌ・エル・エー v. 東洋新薬」 知財高裁平成27年(行ケ)10231)の確定を受けて再係属となった上記審判において、特許庁は原告の訂正請求を認めた上で請求不成立審決をしたため、原告は取消訴訟を提起した。

請求項1:

(訂正前)
黒ショウガ成分を含有する粒子を芯材として,その表面の一部又は全部を,ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする組成物。

(訂正後)
黒ショウガ成分を含有する粒子を芯材として,その表面の全部を,ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする組成物。

【要旨】

取消事由1(進歩性に関する判断の誤り)について

「本件訂正発明は,甲3発明との対比の観点からは,そもそも効果の顕著性について検討するまでもなく進歩性が認められるべき筋合いのものであったといえる。・・・以上によれば,本件訂正発明について,甲3発明との相違点に係る構成自体は推考容易であるとした上で,顕著な効果が認められることを理由に進歩性を認めた本件審決の判断は,その論理構成に誤りがあるものの,結論においては誤りがないというべきであるから,その余の点(効果の点)について検討するまでもなく,原告主張の取消事由1は理由がない。」

取消事由2(サポート要件に関する判断の誤り)について

「・・・黒ショウガ成分を含有する粒子が,その表面の全部についてコート剤で被覆されている場合は,表面の一部がコート剤で被覆されている場合と異なり,相当程度の被覆量でコート剤が用いられることは当業者が理解するところである・・・から,そもそも,表面の全部をコート剤で被覆する態様は,コート剤の被覆の量や程度が不十分である場合には該当しない。したがって,「表面の全部を僅かな量のコート剤で被覆する態様」なるものを想定して,本件訂正発明にも前訴判決の拘束力が及ぶとする原告の主張は,その前提自体が失当である。・・・表面の全部がコート剤で被覆された黒ショウガ粒子が,本件発明(本件訂正発明)の課題を解決できることは,実施例1及び2,比較例1の結果から明らかであるといえる。・・・本件明細書の記載や技術常識を踏まえると,当業者は,たとえ本件明細書に具体的な「コート剤」の量が記載されていなかったとしても,本件訂正発明はその課題が解決できると認識するものと認められる。以上によれば,サポート要件違反の無効理由を認めなかった本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。」

請求棄却。

【コメント】

結論的には特許庁も裁判所も進歩性を認めたわけであるが、引用発明との相違点に係る構成自体は推考容易であるとした特許庁の論理を裁判所は誤りであるとした。また、前訴判決(2017.02.22 「エヌ・エル・エー v. 東洋新薬」 知財高裁平成27年(行ケ)10231)ではサポート要件違反と判断されたが、その後の審判審理において訂正したこと(その表面の一部を被覆したことを特徴とする構成を削除したこと)によりサポート要件違反を解消することができた。

参考:

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