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2016.01.28 「日産化学 v. 三和化学・キョーリンメディオ」 大阪地裁平成26年(ワ)12527; 大阪地裁平成26年(ワ)12531

ピタバスタチン結晶の粉末X線回折ピークの回折角は一致するか: 大阪地裁平成26年(ワ)12527; 大阪地裁平成26年(ワ)12531

【背景】

ピタバスタチンカルシウム塩の結晶に関する特許権(特許第5186108号)及びその保存方法に関する特許権(特許第5267643号(前者の分割))を有する原告(日産化学)が、被告ら(三和化学、キョーリンメディオ)による原薬及び製剤の製造販売等が上記各特許権の侵害に当たる旨主張して、特許法100条1項に基づきその差止めを求めた事案。

本件結晶発明において争点となった構成要件C:

「CuKα放射線を使用して測定するX線粉末解析において,4.96°,6.72°,9.08°,10.40°,10.88°13.20°,13.60°,13.96°,18.32°,20.68°,21.52°,23.64°,24.12°及び27.00°の回折角(2θ)にピークを有し,かつ,30.16°の回折角(2θ)に,20.68°の回折角(2θ)のピーク強度を100%とした場合の相対強度が25%より大きなピークを有し」

本件方法発明において争点となった構成要件C’:

「CuKα放射線を使用して測定するX線粉末解析において,4.96°,6.72°,9.08°,10.40°,10.88°13.20°,13.60°,13.96°,18.32°,20.68°,21.52°,23.64°,24.12°,27.00°及び30.16°の回折角(2θ)にピークを有し,かつ」

【要旨】

主 文

原告の請求をいずれも棄却する。(他略)

裁判所の判断

「特許請求の範囲及び明細書の記載によれば,本件各発明の技術的範囲に属するというためには,構成要件C,C′に規定された15本のピーク全てについて回折角の数値が小数点以下2桁まで一致することを要すると解すべきである。
そうすると,被告ら製剤が使用する原薬に含まれるピタバスタチンカルシウム塩における15本のピークの回折角(2θ)は,別紙物件目録1及び別紙物件目録3記載のとおりである旨の原告主張を前提としても,三和錠においてはそのうち12本のピークの数値が,杏林錠においてはそのうち11本のピークの数値が,いずれも構成要件C,C′の回折角の数値と小数点第2位まで一致しているわけではないから(甲12の1,2),構成要件C,C′を充足せず,したがって,この原薬に含まれるピタバスタチンカルシウム塩を含有する被告ら製剤についても構成要件C,C′を充足しないことになる。

この点,原告は,本件各発明における「結晶」は,結晶形態Aであり,~技術常識を踏まえて解釈されるべきである旨主張する。
しかし,~「結晶形態A」という特許請求の範囲の記載から離れた上位概念を用いて本件各発明の技術的範囲を定めるべきとする原告の前提とする主張は明らかに失当である。また~規定数値の±0.2°以内であれば誤差として同一性を肯定し得ることが当業者の常識であったとまでは認められないし,そもそも本件各明細書の特許請求の範囲や明細書には回折角の数値に一定範囲の誤差が許容される旨の記載や,15本のピークの一部のみによって特定が可能である旨の記載が見当たらないことも前記認定のとおりであることからすれば,これらの原告の主張は,特許請求の範囲や明細書の記載を離れて特許発明の技術的範囲を定めるよう求めるものといえ,採用することはできない。

以上によると~原薬及びこれらを含む被告ら製剤は,本件結晶発明及び本件方法発明の技術的範囲に属するとは認められないから,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。」

【コメント】

大阪地裁によるピタバスタチン結晶特許侵害訴訟判決ははじめて(おそらく)。東京地裁や知財高裁による判決と同じく、被告製品は原告特許発明の技術的範囲に属しないとして原告の請求を棄却した(均等論は争われていない。また、無効論は判断されていない)。

下記はピタバスタチン結晶特許に関わる係争についての経緯(一部リンク切れあり)。

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