ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その8): 知財高裁平成26年(ネ)10098
【背景】
「PITAVA」の標準文字からなる商標(分割商標権第4942833号の2、指定商品はピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤)の商標権者である控訴人(興和)が、「ピタバ」を付したピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を販売する被控訴人(Meiji Seikaファルマ)の行為が商標権侵害に該当すると主張して、被控訴人薬剤の販売差止め及び廃棄を求めた事案。
原審: 2014.08.28 「興和 v. Meiji Seikaファルマ」 東京地裁平成26年(ワ)770
【要旨】
裁判所は、被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当し、また、商品の「品質」又は「原材料」を「普通に用いられる方法で表示する商標」(同項2号)に該当するものと認められ、控訴人が有する本件分割商標権の効力は被控訴人各標章に及ばないものと認められるから、控訴人の請求は、いずれも理由がないものと判断した。
【コメント】
原審では、被控訴人標章は被控訴人商品の出所を表示するものではなく、有効成分の説明的表示であると認識すると考え、被控訴人標章の使用は、商標的使用に当たらず、本件商標権を侵害するものではないとした。こうした、いわゆる「商標的使用」でない商標の使用については商標権侵害を構成しないものとする裁判例はこれまで数多く蓄積されていたが、こうした裁判例は商標法上の特定の規定を根拠とするものではなかった(平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書「第4章 商標法の保護対象の拡充等」p181)。
しかし、2015年4月1日付で施行された平成26年特許法等改正法(平成26年5月14日法律第36号)で商標法26条6号が新設され、いわゆる「商標的使用」がされていない商標に対しては商標権の効力が及ばないことが明文化されたことで、本件について知財高裁は商標法上の規程を根拠として原審と同じ結論を出すことができたわけである。
参考:
(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 (略)
二 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
三~五 (略)
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
関連判決(ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その1~7):
- 2015.06.08 「興和 v. ニプロ」 知財高裁平成26年(ネ)10128(原審: 2014.10.30 「興和 v. ニプロ」 東京地裁平成26年(ワ)773; 別紙目録)
- 2015.04.27 「興和 v. テバ製薬」 東京地裁平成26年(ワ)771
- 2015.04.27 「興和 v. 共和薬品工業」 東京地裁平成26年(ワ)766
- 2014.11.28 「興和 v. 東和薬品」 東京地裁平成26年(ワ)772
- 2014.11.28 「興和 v. 小林化工」 東京地裁平成26年(ワ)767
- 2014.10.30 「興和 v. 沢井製薬」 東京地裁平成26年(ワ)768
- 原審: 2014.08.28 「興和 v. Meiji Seikaファルマ」 東京地裁平成26年(ワ)770
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