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2015.01.21 判定2014-600018; 2014-600019; 2014-600020

単剤承認で延長された特許権の効力は配合剤に及ぶか?: 判定2014-600018; 2014-600019; 2014-600020

請求人が求める請求の趣旨は、判定請求書の記載によれば、

  • 判定2014-600018: 「イ号物品(テルミサルタン+アムロジピンベシル酸塩 配合剤)は、特許第2709225号に係る特許権存続期間延長登録出願2002-700138号により延長された当該特許発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」
  • 判定2014-600019: 「イ号物品(テルミサルタン+アムロジピンベシル酸塩 配合剤)は、特許第2709225号に係る特許権存続期間延長登録出願2002-700137号により延長された当該特許発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」
  • 判定2014-600020: 「イ号物品(原料テルミサルタン)は、特許第2709225号に係る特許権存続期間延長登録出願2002-700137号により延長された当該特許発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」

というもの。

同特許第2709225号は特許権者であるベーリンガーインゲルハイムが開発したアンジオテンシンII受容体拮抗薬テルミサルタン(telmisartan)の化合物特許であり、テルミサンタンを有効成分とする商品名ミカルディスの承認に基づき特許期間が延長登録された(延長登録出願2002-700137、2002-700138)。つまり、当時、延長登録において処分の対象となった物は「テルミサルタン」であった。一方、イ号物品は、「テルミサルタン+アムロジピンベシル酸塩配合剤(判定2014-600018; 判定2014-600019)」または「同配合剤にのみ用いる原料テルミサルタン(判定2014-600020)」であった。

特許庁は、

「判定について、特許法71条1項には「特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。」と規定されている。そして、この規定に基づき判定を求めることができる対象である「特許発明の技術的範囲」については、平成14年改正前の特許法70条1項に「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定され、同2項には「前項の場合においては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定されている。これに対して、本件特許第2709225号の特許請求の範囲及び明細書の特許請求の範囲以外の部分(図面の添付はない)の記載は、これに対して、本件特許第2709225号の特許請求の範囲及び明細書の特許請求の範囲以外の部分(図面の添付はない)の記載は、特許権存続期間延長登録出願2002-700137号に基づく存続期間の延長(登録日:平成15年6月25日)の前後において変わらないのであるから、「特許権存続期間延長登録出願2002-700137号により延長された」という事実は、特許法70条の規定に基づいてなされるものである、本件特許発明の技術的範囲の判断には影響を及ぼさない。よって、本件判定の請求の趣旨は、「イ号物品が、特許第2709225号発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」ものであると解し、以下判断を行う。」

と前置きしたうえで、本件請求項に係る発明とイ号物品を対比した結果、イ号物品は、本件請求項に係る発明の構成要件を充足するから、特許第2709225号発明の技術的範囲に属する、と判定した。

なお、特許庁は、

「判定請求書において、請求人は、「現在本件特許権の効力は特許法68条の2,70条に基づいて、その技術的範囲が解釈される。」との前提の下、イ号製品には本件特許権の効力が及ばない旨の判定を求めているようであるが、特許法68条の2の規定による特許権の効力が及ぶ範囲について、特許庁に判定を求めることができる旨の規定は特許法に存在しないから、特許法68条の2の規定による本件特許権の効力が及ぶ範囲について、請求人は、特許庁に対して判定を求めることはできない。」

として、延長された特許権の効力が及ぶ範囲については判断をしなかった。

【コメント】

当該特許第2709225(出願日1992年2月5日)の存続期間は4年11月20日延長され(延長登録出願番号2002-700137; 延長登録出願番号2002-700138)、満了日は2017年1月25日。

  • 延長登録出願番号2002-700137(延長登録年月日: 2003.06.25)
    (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
    薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同法第23条において準用する同法第14条第1項の承認
    (2)処分を特定する番号
    承認番号 第21400AMY00234000号
    (3)処分の対象となった物
    テルミサンタン
    (4)処分の対象となった物について特定された用途
    医薬品の製造原料として用いる
  • 延長登録出願番号2002-700138(延長登録年月日: 2003.06.25)
    (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
    薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
    (2)処分を特定する番号
    承認番号 第21400AMZ00616000号
    (3)処分の対象となった物
    テルミサンタン
    (4)処分の対象となった物について特定された用途
    高血圧症

請求人は、イ号物品は当該特許第2709225の延長登録出願番号2010-700173の「ミカムロ配合錠AP」に相当すること(判定2014-600018; 判定2014-600019)、または、延長登録出願番号2010-700173の「ミカムロ配合錠AP(テルミサルタン40mg/アムロジピンベシル酸塩6.93mg(アムロジピンとして5mg)含有)」の製造等のためにのみ用いるテルミサルタンであること(判定2014-600020)を主張した。

  • 延長登録出願番号2010-700173: 拒絶査定。
    (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
    薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
    (2)処分を特定する番号
    承認番号 22200AMX00868000
    (3)処分の対象となった物
    ミカムロ配合錠AP
    (4)処分の対象となった物について特定された用途
    高血圧症

延長された特許権(延長登録出願番号2002-700137; 延長登録出願番号2002-700138)の効力が仮にミカルディス(テルミサンタンを有効成分とする単剤)にしか及ばず、テルミサルタンと他剤との配合剤には及ばないとなれば、出願からすでに20年経過した現在において、同特許はテルミサルタンと他剤との配合剤に対して無力ということになる。延長された特許権の効力範囲について、本件で特許庁は判断しなかったため、侵害事件として裁判の場での判断が待ち望まれる。それとも最高裁の判決で何かしらの道しるべがでてくるのか。

関連事件: 2014.10.14 「沢井製薬 v. ベーリンガー インゲルハイム」 判定2014-600007; 2014-600008

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