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2011.12.05 「フリバンセリン事件」特許庁審決 不服2006-027319号事件

フリバンセリン事件の差戻し審決: 特許庁審決 不服2006-027319号事件

【背景】

「性的障害の治療におけるフリバンセリンの使用」に関する出願(特願2003-537639; 特表2005-506370)の拒絶審決取消訴訟において、知財高裁は、特36条6項1号(サポート要件)を満たしていないとした拒絶審決を取消した(2010.01.28 「ベーリンガー インゲルハイム v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10033)。特許庁審判部は、差戻し審理の結果、下記のとおり審決した。

【要旨】

特許庁審判部は、

「本願明細書の発明の詳細な説明の(a)~(f)の記載は、フリバンセリンの性欲障害治療用薬剤としての有用性について一般的な記載及び製剤及び投与量、製剤例に関する記載であり、フリバンセリンが性欲強化特性を有すること、ひいては、フリバンセリンが性欲障害治療用という医薬用途に有効であることを裏付ける記載は全くない。
特に、薬理試験系が不明であるということは、そもそも請求人がいかなる作用を確認した結果、フリバンセリンが、性欲強化活性を有すると結論づけたのか自体が不明であるということであり、また、性欲強化活性の内容が分からなければ、性欲障害の治療に利用できるかどうかも分からないのであるから、フリバンセリンが性欲障害の治療に有効であると理解できるように、発明の詳細な説明が記載されているとは到底いえない。
さらに、薬理試験結果についても何ら具体的に開示されておらず、本願発明の詳細な説明の記載から、フリバンセリンが、性欲障害治療用という医薬用途に有効であることは確認できない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明における、上記摘記事項(a)~(f)の記載は、フリバンセリンが性欲障害治療用という医薬用途に有効であることの裏付けとなるものと認めることはできないものである。
以上、本願明細書の発明の詳細な説明は、フリバンセリンが性欲障害治療用という医薬用途に有効であることが、当業者が理解できるように記載されているとは認められないから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。」

と判断した。

本願は、第36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶をすべきものである。
本件審判の請求は、成り立たない。

【コメント】

第一次審決では、特許明細書には、フリバンセリン類の性欲障害治療用薬剤としての「有用性を裏付ける薬理データ又はそれと同視すべき程度」の記載がされていないことのみを理由として特36条6項1号(サポート要件)を満たしていないとした。しかし、知財高裁は、審決には理由不備の違法があるとして、審決を取り消した。差戻し審理となった本件審決では、特36条6項1号(サポート要件)ではなく、特36条4項1号(実施可能要件)を満たさないと判断された。

参考:

2010.01.28 「ベーリンガー インゲルハイム v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10033

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