スポンサーリンク

2011.07.19 「アラーガン v. 特許庁長官」 知財高裁平成22年(行ケ)10301

配合剤発明の進歩性: 知財高裁平成22年(行ケ)10301

【背景】

「眼科局所用のブリモニジンとチモロールとの組み合わせ」に関する出願(特願2003-585725; 特表2005-523316; WO03088973)の拒絶審決(不服2006-26118)取消訴訟。。争点は進歩性の有無。

請求項1:
有効量のブリモニジンと有効量のチモロールとを,そのための医薬的に許容できる担体中に含む,緑内障または高眼圧症の処置に有用な眼科医薬組成物。

引用発明:
有効量のブリモニジンを含有する組成物と有効量のチモロールを含有する組成物とを組み合わせて用いる,緑内障または高眼圧症の処置用眼科医薬製剤。

本願発明と引用発明の一致点:
「有効量のブリモニジンと有効量のチモロールを含む,緑内障または高眼圧症の処置に有用な眼科医薬製剤」である点。

本願発明と引用発明の相違点:
本願発明は,有効量のブリモニジンと有効量のチモロールを,同一の担体中に含む医薬組成物であるのに対し,引用発明は,それぞれ別個の担体中に含む医薬組成物を組み合わせて用いる点。

【要旨】

裁判所は、

「緑内障等の眼疾患の患者に対して複数の薬剤(薬物)が投与される場合に,医師の指示どおり当該薬剤を使用するという患者のコンプライアンスの問題(誤って点眼をしたり,あるいは点眼を忘れたりしないようにする等の問題)が存することは,本願発明の優先日当時において当業者に周知の技術的課題であり,患者のコンプライアンスの向上や副作用の低減等の観点から,複数の薬剤を同一の担体中に含有させて,一つの医薬組成物とし,投与回数を減らすことは,上記当時における当業者の周知技術であったことは明らかであるから,ブリモニジンとチモロールの各点眼剤を別々に投与していたのを,ブリモニジンとチモロールの双方を一つの医薬組成物に含有させ,患者のコンプライアンスの向上等を図ること,すなわち本願発明と引用発明の相違点に係る構成とすることは,上記優先日当時の当業者において,引用発明に基づいて容易になし得たことであるということができる。したがって,本願発明と引用発明の相違点に係る構成の容易想到性に係る審決の判断に誤りがあるとはいえない。」

と判断した。

原告は、

「引用例等には有効量のブリモニジンとチモロールを同一の担体中に含有させるという技術的課題等は一切開示されていない」

などと主張した。

しかし、裁判所は、

「緑内障等の患者に対して,異なる作用機序を有する複数の薬剤を組み合わせた組成物による点眼剤を投与すること自体は~本願発明の優先日当時の当業者の周知技術にすぎない。」
と判断した。

原告は、

「本願発明では,ブリモニジンとチモロールを配合することにより相乗効果が得られており,引用発明からは予測し得ない格別顕著な効果がある」

等主張した。

しかし、裁判所は、

「ブリモニジンとチモロールを同一担体中に配合した場合(本願発明)とブリモニジンとチモロールの各点眼剤を併用した場合(引用発明)との間で,当業者の予測を超えた顕著な作用効果の差異があるとまではいことができない。したがって,本願発明における相乗効果等をいう原告の主張は採用することができない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

欧米の審査でも本件引用例と同じ文献がprior artとして引用され進歩性(非自明性)の拒絶理由を受けている。

しかし結果的には、米国では特許成立。
・US 7,030,149 B2
・US 7,320,976 B2
・US 7,323,463 B2
・US 7,642,258 B2

一方、欧州では本件引用例についての拒絶理由が解消せず、現在Appealして争っている(T1064/08)。
・EP 1496912 A1
・EP 2241319 A1(上記出願の分割出願)

同一引用文献に対する進歩性(非自明性)の主張及び審査官の拒絶理由を三極で比較検討できる良い事例かもしれない。

参考:

コメント

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました