2011年8月19日、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会 第6回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループが開催され、配布資料が公開されました。
最高裁判決(平成21年(行ヒ)324~326)が言い渡され、特許庁の上告が棄却された結果、特許庁の審査基準を早急に見直す必要がでてきました。今回の審議では、特許庁から運用案(1)及び(2)が提案され、日本製薬工業協会(製薬協)及び日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)からそれぞれ意見・要望が提出されました。
製薬協は、「本判決は、先行医薬品が本件特許権の特許発明の技術的範囲に属しないときについてのみ判断したものであり、技術的範囲に属するときについての判断を示すものではない。~今回の運用変更は、最高裁判決の要旨から導かれる内容に止めるべきである。延長制度の全体像の見直しには判例の蓄積と十分な検討が必要であり、それを行う場合には法改正も視野に入れた議論が必須である。」という慎重な立場を示しました。2011.04.28 「特許庁長官 v. 武田薬品」 最高裁平成21(行ヒ)326で言及しましたが、「属する」場合の解釈によっては、影響大という点を考慮したものと思われます。
GE薬協は、「今回の最高裁判決でも、それぞれの特許について、最初の承認で延長が認められるものであれば「特許発明の実施」が可能となっていると考えられるため、例えば、効能追加、用法用量追加、剤形追加等、後の医薬品の承認による2回目以降の延長を認める必要はないとの解釈も可能かと考えられます。」との意見を提出し、「今回の判例に対して、審査基準の改定による手当てを行うのであれば、特許の種類に係わらず、「特許発明の実施」が可能となった最初の処分に基づく延長のみを許容する運用、すなわち一の特許につき1回のみの延長とする運用への変更」を要望しています。
落とし所を求めるためには、非常にタフな議論を経なければならないと予想されますが、特許庁から提示された運用案(2)を見ると、特67条の3第1項1号の要件適合性について、いまだに「物と用途」という特68条の2の観点、しかもその「物」を「有効成分」と見る立場、にしがみついているように感じられます(2000.02.10 「グラクソ v. 特許庁長官」 東京高裁平成10年(行ケ)361を引用するなど、苦心しているのは理解できますが)。
参考:
- 2009.07.16 「第5回 特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ開催」
- 2011.04.28 「特許庁長官 v. 武田薬品」 最高裁平成21(行ヒ)326
- 特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準及び審査の取扱いについて
- 2000.02.10 「グラクソ v. 特許庁長官」 東京高裁平成10年(行ケ)361
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