どうなる日本の特許権存続期間延長登録制度?
「長期徐放型マイクロカプセル」事件(2009.05.29 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10459)等の武田薬品が提起した下記審決取消訴訟は、特許権存続期間延長登録出願の審査実務だけでなく、延長された特許権の効力の範囲についても大きな疑問を投げかけるものでしたが、将来必ず起こるだろう先発メーカーとジェネリックメーカーとの間に顕在化する問題は未解決のままです。特許請求の範囲と特許権の効力が表裏一体であるように、特許権存続期間延長登録出願で求めるクレームと延長された特許権の効力は切っても切り離せない関係。下記知財高裁判決の上告審、そして、特許権存続期間延長の制度設計は今後どのように改められていくのでしょうか?
- 2009.05.29 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10459
リュープリンSR注射用キット11.25(有効成分: 酢酸リュープロレリン)をカバーする製剤特許。また、本件は効能・効果を「閉経前乳癌」とする処分に関するものでしたが、2007.07.19 「武田 v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10311(効能・効果を「前立腺癌」とする処分に関するものだった)との関係を同時に検討してみると興味深いものがあります。- 2009.05.29 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10458; 2009.05.29 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10460
パシーフカプセル30mg(有効成分: 塩酸モルヒネ)をカバーする製剤特許。- 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会 特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ
その他、2009年において、特許権存続期間延長登録出願について特許庁の判断が知財高裁で覆された事件は下記のとおり。
- 2009.12.03 「イミュネックス v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10092
エンブレル(Enbrel、有効成分: エタネルセプト(Etanercept))をカバーする特許。承認処分対象物が請求の範囲に含まれるかどうかの認定が問題となりました。- 2009.11.19 「ノバルティス v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10097
ネオーラル(Neoral、有効成分: シクロスポリン(Ciclosporin))をカバーする製剤特許。審査を一時中断したのは、追加効能の薬価適応について保険局との調整がつかなかったという厚生労働省側の事情でした。- 2009.05.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10476; 2009.05.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10477; 2009.05.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10478
タケプロンカプセル(有効成分: ランソプラゾール(lansoprazole))をカバーする製剤特許。特許庁審査官・審判官が特許原簿など特許庁に備えられている資料との照合を省略することが正当化される理由はありません。政令で定める処分の対象となった「物」(又は「物」及び「用途」)が特許請求の範囲によって明確に記載されていることが必要となるとはいえない、と裁判所は言及しました。
関連:
コメント