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2008.10.06 「ユーロスクリーン v. 小野薬品」 大阪地裁平成18年(ワ)7760

ケモカイン受容体88C(CCR5)の機能: 大阪地裁平成18年(ワ)7760

【背景】

原告は、被告のスクリーニング行為などがケモカイン受容体88C(CCR5)に関する本件特許権(第3288384号)を侵害するとして、被告に対し、特100条1項又は2項等に基づき、ケモカイン受容体CCR5のDNA、DNAベクター、トランスフェクトされた細胞及びポリペプチド、並びにこれらを使用して得られた記録媒体及びONO4128その他の一切の化合物の、生産、使用、譲渡等の差止、補償金の支払、損害賠償の支払等を請求した。

【要旨】

裁判所は、

「本件基礎出願1の明細書には,ケモカイン受容体88C(CCR5)と結合するケモカイン(リガンド)についての記載がなく,88Cの機能が開示されていないこととなり,産業上の利用可能性ないし実施可能性要件を欠き,また,最初の出願に係る出願書類の全体により本件各発明が明らかにされているということもできない。したがって,本件特許は,本件基礎出願1に基づく優先権を享受することができない。~アイコスは,前記本件基礎出願1の後である~本件基礎出願2の明細書において,CCR5のリガンドとしてRANTES,MIP-1α,MIP-1βを特定している。しかし、本件基礎出願2の出願日(平成8年6月7日)に先立ち,上記リガンドについての文献~が存する。~そうすると,本件各発明は,上記文献に開示されているか,もしくは,これから容易に想到することができるというべきである。以上によると,本件特許は,本件基礎出願2の優先権を主張できたとしても,本件各発明に係る特許は,いずれも新規性もしくは進歩性を欠如することとなり,特許無効審判により無効にされるべきであると認められるから(特許法123条1項2号,29条),特許法104条の3により,原告は,被告に対し本件各発明に係る特許権を行使することができない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

原告が主張する機能は、本件ケモカイン受容体88C(CCR5)に期待される機能ではあるが、期待に過ぎないとされた。

リガンドの必要な受容体であるからには、そのリガンドが何なのかを明細書中に明らかにすることが、受容体蛋白関連発明における産業上の利用可能性ないし実施可能性要件を満たすボーダーラインのようである。

優先権が主張できるかどうかが将来問題になる可能性を念頭に、基礎出願段階から明細書の記載ぶりには注意しなければならない。

参考:

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