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2008.04.24 「ディー・エフ・ビー v. サムヤン・ジェネックス」 知財高裁平成19年(行ケ)10054

顕著な効果の整合性・客観性: 知財高裁平成19年(行ケ)10054

【背景】

「タクスス属種の細胞培養によるタキソールおよびタキサンの増強された生産」に関する特許(第3513151号)に対する無効審判(無効2005-80355号)係属中にした訂正請求について、特許庁は、訂正を認めたが、本件訂正発明は、進歩性が無いとして特許無効審決を下したため、特許権者である原告(ディー・エフ・ビー)が審決取消訴訟を提起した。

訂正後請求項1:

下記工程を含むことを特徴とする,タクスス・シネンシスの細胞培養から高収率でタキソールおよびタキサンを回収する方法;
(a) タクスス属種由来の細胞を,1つ以上の栄養培地で,天然のタクスス・シネンシスにより生産される量より少なくとも10倍量のタキソールとタキサンとを生産する条件下で培養する工程であって,
(i) タクスス・シネンシス細胞を,培養細胞の迅速な成長に有利な懸濁液の成長栄養培地に植菌して植菌懸濁物を形成する工程,
(ii) 前記工程(i)の植菌懸濁物を成長させ,バイオマスを増殖させる工程,
(iii) 前記工程(ii)の懸濁培養物をタキソール及びタキサンの生合成に有利な生産栄養培地に継代培養して生産培養物を形成する工程,ここで,前記生産栄養培地は生産物形成のために独立して最適化され,前記成長栄養培地と異なる,
(iv) 前記工程(iii)の生産培養物をタキソール及びタキサンを形成するための条件下で培養する工程,
を含む工程;及び
(b) 前記工程(iv)の培地,細胞,または生産培養物の培地及び細胞から前記タキソールおよびタキサンを回収する工程。

【要旨】

取消事由2(容易想到性の判断の誤り)について、

原告は、

「本件訂正発明1の実施例9において,生産栄養培地でのタキソールの容積生産量が,引用発明に比べて顕著なことから,この作用効果は,タクスス属の中からタクスス・シネンシスを選択し,それを二段階培養することによってはじめて得られたものであるから,本件訂正発明1は,引用発明から容易に想到し得るとはいえない」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「本件訂正明細書の実施例8によると~容積生産量が少ないことが認められる。原告は,実施例8は実施例9とは細胞接種量が異なると主張するが,本件訂正発明1には細胞接種量の限定はないので,実施例8もまた本件訂正発明1の実施例というに妨げず,原告の主張は採用の限りでない。~実施例9の効果が得られる場合があるとはいえても,上記構成によってその効果が直ちに得られるということはできない。~したがって,本件訂正発明1の構成を充足すれば,必然的に実施例9記載の効果が得られるということはできないから,原告の主張は採用できない。」

と判断した。

また、原告提出の実験結果について、裁判所は、本件訂正発明と引用発明とが同一条件下で対比されていないこと等から、本件訂正発明の構成によって引用発明と比べて顕著な作用効果が得られるとは認められないと判断した。

請求棄却。

【コメント】

顕著な効果を主張する際には、クレーム範囲に含まれる具体的な実施例の各々の効果と本願発明(クレーム)として主張する効果との間に整合性があるかどうか注意深く検討しなければならない。

引用発明と比較して顕著な効果を有していることを当業者が見て客観的に理解できるよう、提示する実験条件が適切かどうかは注意が必要(サイエンスとして当然のことである)。

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