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2007.06.28 「Takeda v. Alphapharm」 CAFC Docket No.06-1329

ACTOS(アクトス)米国特許侵害訴訟: CAFC Docket No.06-1329

【背景】

武田薬品が販売するチアゾリジンジオン系糖尿病治療薬である塩酸ピオグリタゾン(pioglitazone hydrochloride、商標名:ACTOS、アクトス)について、ジェネリックメーカーであるAlphapharm社がFDAにANDA申請したことに対し、特許権者である武田薬品が侵害訴訟を提起した。

Alphapharm社は、該特許(US4,687,777)は自明であり、特許は無効である等を主張した。地裁は特許は有効であると判断、Alphapharm社は控訴した。

争われたクレームは下記の一般式

で表されるピオグリタゾンをカバーする化合物等であり、公知化合物は、ピリジン環の6位にメチル基を有する点のみが構造上異なるチアンゾリンジオン誘導体(化合物b)であった。

【要旨】

CAFCは、

「化学物質における一応の自明性(prima facie obviousness)を判断する際に、
“prior art would have suggested making the specific molecular modifications necessary to achieve the claimed invention”
であることを明示するよう要求してきた判断は、KSR事件で最高裁が出した法理に一致しており、従って、
“in cases involving new chemical compounds, it remains necessary to identify some reason that would have led a chemist to modify a known compound in a particular manner to establish prima facie obviousness of a new claimed compound.”
である」

と言及した。

Alphapharm社は、

「当業者なら化合物bをリード化合物として選択するだろうし、そうすれば、
“one of ordinary skill in the art would have made two obvious chemical changes: first, homologation, i.e., replacing the methyl group with an ethyl group, which would have resulted in a 6-ethyl compound; and second, “ring-walking,” or moving the ethyl substituent to another position on the ring, the 5-position, thereby leading to the discovery of pioglitazone”」

と主張し、また、

「KSR事件での判断に依拠して、”homologation”及び “ring-walking”の技術を使用することは”obvious to try”であった」

と主張した。

しかし、CAFCは、化合物bの副作用の懸念を示唆した文献を考慮して、

“Significantly, the closest prior art compound (compound b, the 6-methyl) exhibited negative properties that would have directed one of ordinary skill in the art away from that compound.”

と認定し、当業者なら化合物bをリード化合物として選択するであろうとのAlphapharm社の主張に同意しなかった。

さらに、CAFCは、武田薬品が毒性という点でピオグリタゾンと化合物bとは有意に異なる旨を示している点を挙げ、たとえ上記のAlphapharm社の主張が認められたとしても、

“Takeda rebutted any presumed expectation that compound b and pioglitazone would share similar properties.”

であると判断した。

Alphapharm社はクレームされた化合物がprima facie obviousであったであろう点を証明できておらず、特許は有効であるとの地裁判断に誤りはないとし、特許有効判決を支持した。

【コメント】

化学物質における一応の自明性(prima facie obviousness)が争われた事例。判決文中にKSR事件での最高裁の判断を明確に考慮している点でも注目すべき判決。

但し、補足意見で指摘されているように、ピオグリタゾン以外の6-ethyl compoundについては予期できない結果を示す証拠は示されておらず、ピオグリタゾンに限定されていないgenus claimであるクレーム1及び5を有効とした判断については果たして妥当なのかどうか疑問である。

Orange Bookによれば、本件特許の存続期間は2011年1月17日までとのこと。

CAFC判決を不服としてAlphapharm社は米国最高裁判所に上告していたが、2008年3月31日、同裁判所は上告を棄却する決定を下した。

参考:

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