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2006.09.14 「ヴィアトリス v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10719

「抗糖尿病作用」から「真性糖尿病Ⅰ型の治療」の進歩性: 知財高裁平成17年(行ケ)10719

【背景】

本発明は「R-α-リポ酸を含有することを特徴とする真性糖尿病I型の治療用薬剤」であり、刊行物1に基づき進歩性が否定された。

請求項1:

R-(+)-α-リポ酸,R-(-)-ジヒドロリポ酸又はそれらの塩,エステル,アミドを含有することを特徴とする,真性糖尿病I型の治療用薬剤。

原告は、

1) 刊行物1はビタミンEとの組み合わせであってR-α-リポ酸単独の効果を示していない点、
2) 本願発明は特に「真性糖尿病Ⅰ型の治療用薬剤」としているのに対し、刊行物1は単に「抗糖尿病作用」の存在を示すにとどまる点で相違する点、
3) R-α-リポ酸がラセミ体及びS-リポ酸に比べ毒性が少ないという顕著な効果がある点

等を主張した。

【要旨】

クレームは、R-α-リポ酸以外の成分も含有する剤と解釈されるので、刊行物1がビタミンEとの組み合わせであっても相違しない。また、刊行物1自体が教示しているように、当該刊行物1発明を「真性糖尿病I型の治療用薬剤」とすることは、当業者が容易に想到することができたものというべきである。

さらに、毒性の認識の有無に関わらず最も薬理効果の高いもの(すなわちR-α-リポ酸)を採用することは、当業者が容易に想到することができたものというべきであるから、原告が主張する上記毒性に関する知見の発見は、本願発明の特許性を基礎づけることになるものではない。

進歩性なし。

請求棄却。

【コメント】

進歩性なしの判断は当たり前かなーという事案。

本事案から得られる教訓は、動機付けが確立されている場合には、たとえ、他の新たな知見に基づく顕著な効果(例えば、本件では、毒性という観点)を主張したとしても、確立されてしまった動機付けを覆すことは困難であるという点くらいか。

参考:

ちなみに、チオクト酸(α-リポ酸)は、日本では、従来、医薬品としてのみ使用が許可された成分だったらしいが、2004年に食品としての使用も許可され、現在は、サプリメントに配合されて健康食品としても販売されているようである。

欧州では、チオクト酸(α-リポ酸)は糖尿病患者の末梢神経障害の治療薬として使用されているらしい(Thioctacid®)。

参考:

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