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2007.11.29. 「イエダ v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10105

実験的に実証されていないから進歩性があるのか?: 知財高裁平成19年(行ケ)10105

【背景】

「溶解型TNF受容体のマルチマー,その製造方法,およびそれを含有する医薬組成物(特開平7-145068号)」に関する発明が引例との関係で進歩性を有しないとの拒絶審決に対して取消しを求めた事案。

請求項1:

TNFのその受容体への結合の妨害能を有しTNFの作用を遮断できる,溶解型TNF-Rのマルチマーまたはその塩であって,該マルチマーはTBP-Iからなる,あるいはTBP-IとTBP-IIの混合物からなる,溶解型TNF-Rのマルチマーまたはその塩。

【要旨】

裁判所は、

「引用例1には,「溶解型TNF-Rのマルチマー」につき,TNF依存性応答を抑制するために投与され,TNFによって引き起こされる病気や疾患を治療するために使用されることも記載されている。そして,以上の事実に,前記4のとおり,TNFに特異的に結合する2種類のタンパク質として,TBP-IとTBP-IIがあり,これらは,TNFの細胞破壊作用に対して防護作用を有することが,本願優先日前から知られていたことからすると,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が,引用例1に記載された「溶解型TNF-Rのマルチマー」について,「TBP-Iからなる,あるいはTBP-IとTBP-IIの混合物からなる」ものを用いてみようと発想する十分な動機付けがあるということができるのであり,相違点①を容易に想到することができたものというべきである。」

と判断した。

この点、出願人は、

「TNFが結合するTNF-Rの形態について,~まだ何もわかっていない。~その「多価形態」におけるその「結合能力」についても実証されていない」

等の主張をしたが、裁判所は十分な動機付けがあるとしてその主張を採用することはできないと補足的に言及した。

請求棄却。

【コメント】

実験的に実証されていないことを証明したからといって、進歩性があるということにはならない。

完全ヒト型可溶性TNFα / LTα レセプター製剤としてエンブレル(Enbrel、一般名:エタネルセプト(Etanercept))が既に販売されいるが、これは、遺伝子組換えにより産生された、 ヒトIgG1のFc領域とヒトTNFⅡ型レセプターの細胞外ドメインのサブユニット二量体からなる糖蛋白質であり、本願のTBP-I(TNFⅠ型レセプターに相当)からなるマルチマーとは相違するものである。

参考:

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