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2004.04.08 「PPG v. Saint-Gobain」 EPO審決G01/03

ディスクレーマーの許容性(EPOの判断): EPO審決G01/03

【背景】

異議決定について審判請求された後、ディスクレーマー(除くクレーム補正)はEPC123(2)において許容されるか、許容されるならばそのクライテリアは何なのかについての判断について、拡大審判部に付託された。

【要旨】

明細書に開示のないディスクレーマーは下記の目的であればEPC123(2)に反しない。

(i)post-published prior art(EPC54(3)(4))と区別するため。
(ii)accidental anticipation(54(2))と区別するため。
(iii)非技術的理由。

Accidental anticipationは、当業者が本発明をなす際に決して考慮しないであろう本発明から無関係又は程遠い開示を意味する。

また、デイスクレーマーを用いたとしても、ディスクレーマーを含まない基礎出願からの優先権には影響しない。

“Therefore, its introduction is allowable also when drafting and filing the European patent application without affecting the right to priority from the first application, which does not contain the disclaimer.”

【コメント】

G02/03とともにディスクレーマーの許容性について判断されている(審決内容はG01/03とG02/03は同じ)。

上記要件を満たさなければ、そもそもディスクレーマーは認められない。

特に上記(ii)の要件について言えば、進歩性の引例となるような同技術分野の発明を除くディスクレーマーはできないことになる。

また、ディスクレーマーは優先権に影響しない。

一方、日本においては、ディスクレーマーが許容されているが、その補正後に進歩性が問われることになる。

また、審査基準によれば、国内優先権主張の効果について、「後の出願の請求項に係る発明が、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものであるか否かの判断は、新規事項の例による。」とある。

従って、審査基準に示された「除くクレーム」とする補正(デイスクレーマー)は、EPOの判断と同様に、国内優先権には影響しないようである。

参考:審査基準「第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正、第I節 新規事項、4. 特許請求の範囲の補正 4.2 (4)除くクレーム」 より。

(4) 除くクレーム
「除くクレーム」とは、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。
補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、補正により当初明細書等に記載した事項を除外する「除くクレーム」は、除外した後の「除くクレーム」が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである場合には、許される。

なお、次の(i)、(ii)の「除くクレーム」とする補正は、例外的に、当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものと取扱う
(i)
請求項に係る発明が、先行技術と重なるために新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)を失う恐れがある場合に、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該重なりのみを除く補正
(ii)
請求項に係る発明が、「ヒト」を包含しているために、特許法第29条柱書の要件を満たさない、あるいは、同法第32条に規定する不特許事由に該当する場合において、「ヒト」が除かれれば当該拒絶の理由が解消される場合に、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該「ヒト」のみを除く補正。

(説明)
上記(ⅰ)における「除くクレーム」とは、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、特許法第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条に係る先行技術として頒布刊行物又は先願の明細書等に記載された事項(記載されたに等しい事項を含む)のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。

(注1)「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができるのは、先行技術と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有する発明であるが、たまたま先行技術と重複するような場合である。そうでない場合は、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶の理由が解消されることはほとんどないと考えられる。
(注2)「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがあるので、留意が必要である。

上記(ii)における「除くクレーム」は、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、「ヒト」のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。

このような取扱いとする理由は、以下の通りである。
①たまたま先行技術と重複するために新規性等を欠くこととなる発明について、このような補正を認めないとすると、発明の適正な保護が図れない。そして、このような場合、先行技術として記載された事項を当初の請求項に記載した事項から除外しても、これにより第三者が不測の不利益を受けることにもならない。
②「ヒト」を包含するために、特許法第29条柱書の要件を満たさないか、あるいは同法第32条に規定する不特許事由に該当する場合、「ヒト」を除く補正をしても、除かれる範囲は明確であり、かつ、これにより当該拒絶の理由が解消される。また、これにより、特許を受けようとする発明が明確でなくなることはない。

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