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WHO加盟国、パンデミック協定(条約)の草案で合意 — 2025年5月の世界保健総会で審議へ —

2025年4月16日、WHO加盟国は、将来のパンデミックに備える国際協定「WHO Pandemic Agreement(パンデミック協定)」(パンデミック条約とも呼ばれる)の草案に合意し、2025年5月開催の第78回世界保健総会(WHA)への提案に向け、大きな前進を果たしました。

この協定は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から得られた教訓を踏まえ、パンデミックの予防・準備・対応に関する国際協調の枠組みを強化することを目的としています。

草案の策定は、2021年12月に設立された政府間交渉機関(INB)が中心となり、13回の正式会合と多数の非公式協議を経て進められてきました。

草案には、以下の主要項目が盛り込まれています。

  • 病原体へのアクセスおよび利益の公平な共有システム(PABS System)の構築
  • ワンヘルス・アプローチによるパンデミック予防措置の推進
  • 地理的多様性を踏まえた研究開発体制の整備
  • パンデミック関連医療製品の製造に向けた技術・知識・技能の移転の促進
  • 多職種・高度訓練を受けた国内外の緊急医療人材の動員
  • 協調的な資金メカニズムの設置
  • 保健システムの強靱化・準備能力の強化
  • 世界規模の供給・物流ネットワークの整備

また、各国の公衆衛生に関する主権は明確に尊重されており、WHOが加盟国の法制度や政策を指示・変更・強制する権限を持たないことが明記されています。

知的財産と技術移転のバランス

知的財産との関係では、前文において知的財産権の保護と医療アクセスの両立を図る姿勢が示されています。

特に本文第11条では、パンデミック関連医療製品の生産を促進するために、各国や製造企業に対し、知的財産に基づく技術・ノウハウの移転を、相互合意のもとで柔軟かつ公正に行うよう求めています。

この中には、開発途上国への支援を目的とした非独占的ライセンスの活用や合理的なロイヤリティの設定、WHO主導による技術・知財・データのプール構築などが盛り込まれています。また、TRIPS協定およびドーハ宣言に基づく柔軟性の確認もなされています。

当初草案に含まれていた、知的財産に対して根拠の無い否定的な表現は削除され(知的財産の価格への影響の懸念との表現は前文に残っているようですが)、知的財産の適切な保護を前提としつつ、公衆衛生上の緊急性に対応するための制度的柔軟性と国際協力の確保という、バランス重視の姿勢が明確になったように思われます。

製薬業界への新たな義務規定にも注目

注目すべき点として、病原体へのアクセス及び利益配分に関して定める本文第12条では、パンデミック緊急事態の発生時に、「参加製造業者」(PABS文書において定義される)がWHOに対しワクチン生産分の一定割合を提供する義務が規定されており、今後の利益配分の負担や製造・供給体制への影響が注視されます。詳細は附属書として今後議論されるようです。

内閣官房長官記者会見

林官房長官は、4月16日午後の内閣官房長官記者会見において、「交渉妥結に至ったことは重要な一歩」と評価しつつも、今後も病原体アクセスと利益配分の詳細を定める附属書の交渉については続くとして、日本政府としてはその交渉に建設的に貢献していくと述べました(令和7年4月16日(水)午後-内閣官房長官記者会見)。

やはり、日本政府としても、病原体へのアクセス及び利益配分(本文第12条)の詳細を定める附属書については交渉すべき重要な課題があると考えているようです。

ニャー
ニャー

日本から最前線で交渉してくださった方々には感謝申し上げます。一方で、米国がWHOから脱退してしまったのでパンデミックが起きた時の緊急対応に大きな影響がでないかとても心配です・・・

参照:

 


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