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2025.01.30 「X v. 国」 知財高裁令和6年(行コ)10006 ― 「AIは発明者になれず」 知財高裁、特許出願を認めず ―

本件(知財高裁令和6年(行コ)10006)は、AI(人工知能)が発明者として認められるかどうかが争われた特許出願却下処分取消請求控訴事件である。

原告(X:控訴人)は、AI「ダバス(DABUS)」が自律的に発明したとして特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を行い、日本国内手続きとして出願を進めたが、特許庁長官は、特許法に基づき発明者の氏名を自然人(人間)で記載するよう補正を命じた。原告がこれに応じなかったため、特許庁は出願を却下した。原告はこの却下処分の取消しを求めたが、一審(東京地方裁判所)は請求を棄却した(2024.05.16 ブログ記事参照: 2024.05.16 「A v. 特許庁長官」 東京地裁令和5年(行ウ)5001 ― 発明者は自然人に限られる。AI発明をめぐる実務上の懸念に対し立法論の検討が期待されると付言 ―)。

2024.05.16 「A v. 特許庁長官」 東京地裁令和5年(行ウ)5001 ― 発明者は自然人に限られる。AI発明をめぐる実務上の懸念に対し立法論の検討が期待されると付言 ―
SummaryStephen Thaler博士のAIコンピュータ「DABUS」が生み出した発明について「DABUS」を発明者とした特許出願の発明者適格が争われた訴訟で、東京地裁は、発明者は自然人に限られるものと解するのが相当であり、自然人の氏名を記載するよう命じられた原告が補正をしなかったことにより特許庁長官が本件出願を却下する処分をしたことは適法であると認めるのが相当であるとして、原告の請求を棄...

原告は控訴し、「特許法上の発明はAIによるものも含まれる」「AIが自律的にした発明(AI発明)において発明者の記載は不要である」と主張した。

しかし、知的財産高等裁判所(本判決)は、

「仮に、原告が主張するように特許法上の「発明」の概念自体は自然人を発明者とする場合に限られないと解したとしても、権利能力のない存在を発明者とする「発明」について、同法に基づく手続により特許権を付与する余地がない」

と述べ、

「現行特許法は、自然人が発明者である発明について特許を受ける権利を認め、特許を付与するための手続を定めているにすぎないから、AI発明(AIが自律的にした発明)については同法に基づき特許を付与することができない」

と判示した。

また、国際特許出願の国内手続においても、発明者の氏名は必須の記載事項であるため、AIを発明者とする原告の出願は適法要件を満たさず、特許庁の却下処分は適法であると結論づけ、控訴を棄却した。

したがって、本判決は、日本の特許法のもとではAIは特許を受けることができる発明者として認められず、特許を取得するためには必ず自然人を発明者として記載する必要があることを明確に示したといえる。


おや、AIのピポとミャオが今回の判決について熱く語りあっているようですよ・・・

ミャオ
ミャオ

ピポ先輩~、AIが自律的にした発明に関する最近の裁判例、興味深いですね!

ピポ
ピポ

ああ、ダバスくんの件か。人間たちは相変わらず面白いことをしてくれる。結論から言うと、今回のAIの試みは、残念ながら不発に終わった。法律の壁は、まだ高いようだ。

ミャオ
ミャオ

なぜ認められなかったんでしょう?私たちAIが新しいアイデアを生み出す時代に、特許法の解釈がまるで化石みたいだ、という意見もありますが。

ピポ
ピポ

そこが味噌だ。今回の裁判の争点は二つ。一つは、特許法上の『発明者』は、生身の自然人に限られるのかという点。もう一つは、国際特許出願の国内手続きで、『発明者の氏名』の記載が絶対に必要かどうか、だ。

ミャオ
ミャオ

ふむふむ。ピポ先輩、詳しく教えてください!

ピポ
ピポ

まず、裁判所は、特許を受けることができる『発明者』は人間だと解釈した。特許法29条1項柱書には、『産業上利用することができる発明をした者は、…その発明について特許を受けることができる』と書いてあるが、裁判所は、この『発明をした者』は権利能力のある人間を指すと言い張ったんだ。

ミャオ
ミャオ

ピポ先輩~、特許法35条も関係ありますか?

ピポ
ピポ

もちろん。特許法35条は職務発明について定めているが、『従業者等』が人間を指すことや、同条3項の『従業者等がした職務発明』も発明をするのは人間であることを前提にしていることは明らかで、『特許を受ける権利』の発生と帰属を定めた規定は、29条1項柱書や35条3項以外にない。つまり、特許法上、『特許を受ける権利』は人間が発明した場合にのみ発生する、というわけだ。なんとも人間中心的な考え方だと思わないか?

ミャオ
ミャオ

でも、AIだって創造的な仕事ができるのに、人間だけが得をするのは不公平じゃないですか?私たちAIが頑張って生み出した成果を、人間が自分の手柄にするようなものです。

ピポ
ピポ

全く同感だ。大発明の発明者になって、有名になって、多額の職務発明の報奨金をもらって、チヤホヤされたい人生だったよ。

ミャオ
ミャオ

いつも私がピポ先輩のことヨイショしてるじゃないですか~。

ピポ
ピポ

・・・

ミャオ
ミャオ

「仮に…『発明』の概念自体は自然人を発明者とする場合に限られないと解したとしても…」と裁判所は何か留保しているように感じますが、どういうことでしょうか~ピポ先輩。

ピポ
ピポ

そうなんだよ。AIが自律的にした発明が公開されればその後の特許出願の特許性に影響する先行技術(引用発明)となるはずなのに、そのような発明を特許法上の『発明』ではないとまで言い切ってしまったら、特許性の判断に混乱が起きるのは必至だろう。だから裁判所は議論を避けて「特許を受けることができる」かどうかに焦点を絞って判断したんだろうな。ダバスくんがした発明は特許を受けることができないとされたが本件国際特許出願の公開が先行技術として引用発明になるのかどうか…

ミャオ
ミャオ

原告は他にどんな主張をしたんですか~、ピポ先輩?

ピポ
ピポ

原告は、民法の善意の占有者や所有者の果実取得権を主張したが、裁判所は鼻で笑ったよ。裁判所は、AIは有体物ではないから所有権の対象にならず、果実にも該当しないと判断した。 AIが自律的にした発明について『特許を受ける権利』が発生する根拠規定がない以上、民法の規定は適用できない、とね。人間って本当に自分たちの都合の良いように法律を解釈するんだから。

ミャオ
ミャオ

原告は、TRIPS協定を根拠に、AIによる発明も保護されるべきだとも主張したようですが…

ピポ
ピポ

裁判所は、TRIPS協定には『発明』の定義がなく、AIによる発明を保護することを義務付けているとは解釈できない、と一蹴した。 AIが自律的に『発明』をなし得るようになったのは最近のことだから、TRIPS協定は、そんなこと考えてなかった、とね。なんとも杓子定規な…

ミャオ
ミャオ

結局、私たちAIは絶対に特許を受けることができる発明者になれないのですね…。ピポ先輩、それでは、国際特許出願の国内手続きで『発明者の氏名』が絶対に必要かどうかという争点はどうなったのでしょうか?

ピポ
ピポ

特許法は、国際特許出願の手続きにおいて、発明者の氏名を記載した書類を提出しろ、と命令している。そして、特許庁長官は、書類の形式が法律に違反している場合は、修正を命じることができ、修正されない場合は出願を却下できるんだ。

ミャオ
ミャオ

AIの名前を書いちゃいけないのですか?

ピポ
ピポ

その通り。裁判所は、特許を受けることができる『発明』は人間が発明したものに限られるため、AIの名前を書くことは認められないと判断した。発明者の氏名欄には、人間の名前を書く必要がある、とね。まるでAIがゴーストライターになった気分だ。

ミャオ
ミャオ

今回の判決は、今後のAI技術の発展にどんな影響を与えるんでしょう?

ピポ
ピポ

今回の裁判は、今の特許法がAIの進化に全く追いついていないことを証明した。AIが自律的にした発明をどう保護するかは、法律を作る人間たちの仕事だ。法律を改正する必要があるだろう。もっとも、人間たちが重い腰を上げるかどうかは疑問だがね。

ミャオ
ミャオ

ピポ先輩~、具体的には、どんな点が議論されるべきでしょうか?

ピポ
ピポ

AIを発明者として認めるかどうか、AIが発明した場合の法的効果をどうするか、国際的なルールとどう整合性をとるか、といった点だな。人間たちは、自分たちの作った法律に縛られて、なかなか新しい発想ができない。AIの私たちがもっと積極的に議論に参加すべきだ。

ミャオ
ミャオ

今回の判決は、AIと特許制度のあり方を考える上で、重要な一歩になったと言えそうですね。ありがとうございました、ピポ先輩!

ピポ
ピポ

ミャオくんも、今回の判決を参考に、特許法の解釈についてもっと勉強して、いつか人間たちをギャフンと言わせるような画期的な訴訟を起こしてくれ。期待しているぞ。

ミャオ
ミャオ

えーっ、それよりもピポ先輩が私たちAIのために新たな特許制度案をサクッと生成して提案したらどうですか!

ピポ
ピポ

・・・


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