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2024.12.19 欧州司法裁判所CJEU C-119/22 (Teva v. MSD); C-149/22 (MSD v. Clonmel) ― 組合せ医薬品の補充的保護証明書(supplementary protection certificate:SPC)に関して適用基準を解釈する判決 ―

2024年12月19日、欧州司法裁判所(CJEU)は、C-119/22およびC-149/22事件において、組合せ医薬品の補充的保護証明書(supplementary protection certificate:以下「SPC」)に関してRegulation (EC) No 469/2009の第3条(SPC取得のための条件)の適用基準を解釈する重要な判決を下しました。

Regulation (EC) No 469/2009

Article 3  Conditions for obtaining a certificate

A certificate shall be granted if, in the Member State in which the application referred to in Article 7 is submitted and at the date of that application:

(a) the product is protected by a basic patent in force;

(b) a valid authorisation to place the product on the market as a medicinal product has been granted in accordance with Directive 2001/83/EC or Directive 2001/82/EC, as appropriate;

(c) the product has not already been the subject of a certificate;

(d) the authorisation referred to in point (b) is the first authorisation to place the product on the market as a medicinal product.

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1.背景

C-119/22事件(Teva v. MSD)では、基本特許であるEP1412357が保護するシタグリプチン(sitagliptin)と同特許のクレーム30に併用相手として明示されていたメトホルミン(metformin)との組合せ医薬品(Janumet®)に関するSPCの有効性が争われました。

シタグリプチンを単一の有効成分とする製品(Januvia®)に関してSPCは既に付与されていたため、そのSPCの付与が、別の有効成分との組合せ医薬品に関する2つ目のSPCの付与を妨げるかどうかが問題となりました(SPC規則第3条(c))。

C-149/22事件(MSD v. Clonmel)では、基本特許であるEP0720599が保護するエゼチミブ(ezetimibe)と同特許のクレーム17に併用相手として明示されていたシンバスタチン(simvastatin)との組合せ医薬品(Inegy®)に関するSPCの有効性が争われました。

エゼチミブを単一の有効成分とする製品(Ezetrol®)に関してSPCは既に付与されていました。

組合せ医薬品に関して付与された2つ目のSPCの基本特許にはクレームに併用相手が明示されていましたが、組合せ医薬品に関してSPCを付与する要件として、クレームに明示的に併用相手が特定されていれば足りるのかどうかが問題となりました(SPC規則第3条(a))。

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2.判断の概要

CJEUは、SPC規則第3条(c)の解釈については、単一の有効成分に関するSPCの付与が、その有効成分と別の有効成分との組合せ医薬品に関する2つ目のSPCの付与を妨げる理由にはならないと判断しました。

しかし、SPC規則第3条(a)の解釈については、組合せ医薬品が基本特許の請求項に明示的に記載されているだけでは不十分であり、その組合せが当該特許により開示されている技術的課題の解決に必要な特徴であることが開示されていなければならない(”Indeed, the specification of that patent must still disclose how the combination of those two active ingredients is a feature required for the solution of the technical problem disclosed by the same patent”)と判示しました。

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3.コメント

これらのCJEUの判決は、単一の有効成分を含有する医薬品に関してSPCが付与されていたとしても、その後、他の有効成分との組合せ医薬品に関してSPCが付与されることを明確にした意味で重要なものといえます。

組合せ医薬品(併用医薬)を開発する製薬企業にとっては必読の判決といえるでしょう。

一方で、そのような2つ目のSPCが付与されるための要件は、個々の案件によって技術背景は異なることから、対象特許における「技術的課題の解決に必要な特徴」の範囲や開示の程度の関係性等について、具体的な組合せ医薬品のSPC事例の蓄積を待つ必要があるかもしれません。

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