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第一三共ADC技術の知的財産権の帰属を巡るSeagen社との紛争における仲裁廷による判断が最終確定 Seagen社特許の有効性を巡る争いはCAFCによる判断が待たれる

2024年6月28日、第一三共は、第一三共の抗体薬物複合体(以下「ADC」)技術に関するSeagen社との紛争について、仲裁廷による判断が最終確定し、また 、第一三共が当該仲裁に要した費用のうち約47百万米ドル(支払時までの利息を含む)をSeagen社が第一三共に支払ったことを発表しました(2024.06.28 第一三共 press release: 当社ADC技術に関するSeagen社との紛争における仲裁判断の最終確定について)。

仲裁の経緯

Seagen社が、第一三共のADC技術に関する特定の知的財産権は同社に帰属するとして、米国仲裁協会に申立てた仲裁において、仲裁廷は2022年8月にSeagen社の主張を全面的に否定し、係争対象となったADC技術に関する全ての知的財産権は第一三共に帰属するとの判断を下していました。

参考:

第一三共ADC技術の知的財産権の帰属を巡るSeagen社との紛争における仲裁 Seagen社の主張を退け第一三共を支持
1.第一三共のプレスリリース 2022年8月13日付の第一三共のプレスリリースによると、第一三共の抗体薬物複合体(以下「ADC」)技術の知的財産権の帰属を巡りSeagen社と第一三共との間で争われていた仲裁事件で、仲裁廷は、Seagen社の主張を全面的に否定する判断を下したとのことです。 2022.08.13 第一三共 press release: 当社ADC技術に関するSeagen社との紛争にお...

また、仲裁廷は2023年11月に、第一三共が当該仲裁に要した費用のうち約45.5百万米ドルをSeagen社に負担させる判断を下し、仲裁手続きは終了していました(2023.11.20 第一三共 press release: 当社ADC技術に関するSeagen社との紛争における最終仲裁判断について)。

その後、Seagen社はワシントン州西部地区連邦地方裁判所に対し、上記仲裁判断の取消申立を提起しましたが、同地裁は 2024年4月1日判決においてSeagen社の申立を棄却し、上記金額を第一三共に支払うよう命じました。同判決に対しSeagen社が期限内に控訴しなかったため、仲裁廷による判断が最終確定したとのことです。

まだ進行中の侵害事件と無効取消事件

なお、第一三共による米国での「ENHERTU®(エンハーツ)」の販売がSeagen社のADC技術に関する米国特許10,808,039(’039特許)の侵害に当たると主張して、Seagen社が第一三共に対して提起した特許権侵害訴訟において、第一三共に対して、41.8百万ドルの損害賠償額に加え、2022年4月1日からSeagen社の’039が満了する2024年11月4日までのENHERTU®の米国売上に対する8%のロイヤルティの支払を命じた2023年10月17日(現地時間)の米国テキサス州東部地区連邦地方裁判所の判決に対し、第一三共は、米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)に控訴しています(2023.11.17 第一三共 press release: 当社ADC製品に関するSeagen社との特許係争(控訴)に関するお知らせ)(CAFC Case No. 24-1176 AstraZeneca UK Ltd et al. v. Seagen Inc ; Filing Date: 2023-11-20)

参考:

米国でのSeagen社ADC特許侵害訴訟、Enhertu®販売の第一三共に損害賠償とロイヤルティ支払いを命じる地裁判決
第一三共のプレスリリース1)によると、第一三共による米国での「ENHERTU®(エンハーツ)」2)の販売がSeagen社の抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)技術に関する米国特許10,808,039(’039特許)3)の侵害に当たると主張して、Seagen社が第一三共に対して提起した特許権侵害訴訟4)5)について、2023年10月17日(現地時間)、米国テキサ...

また、2024年1月17日、第一三共は、第一三共が米国特許商標庁(USPTO)に請求していたSeagen社の’039特許の有効性を審査する特許付与後レビュー(Post Grant Review)において、USPTOが’039特許は無効であるとの決定を下したと発表しました(2024.01.17 第一三共 press release: 当社ADC製品に関するSeagen社との特許係争に関するお知らせ)。この’039特許は、上記CAFCに控訴中の特許権侵害訴訟において、Seagen社が主張の根拠としている唯一の特許です。

USPTOの無効判断を不服としてSeagen社もCAFCに上訴したようです(CAFC Case No. 24-1878 Seagen Inc v. Daiichi Sankyo Co Ltd et al.;  Filing Date: 2024-05-28)。

参考:

Seagen社の抗体薬物複合体(ADC)特許と第一三共 Enhertu®(エンハーツ)を巡る特許紛争 特許付与後レビュー(PGR)において米国特許商標庁がSeagen社特許を無効と判断
1.第一三共の発表と補足説明 2024年1月17日、第一三共は、第一三共が米国特許商標庁(USPTO)に請求していたSeagen社の米国特許10,808,039(以下「'039特許」)の有効性を審査する特許付与後レビュー(Post Grant Review、以下「PGR」)において、米国特許商標庁が'039特許は無効であるとの決定を下したと発表しました。 2024.01.17 第一三共 press...

なお、この特許係争の最中に、Seagen社はPfizer社により買収されました(2023.12.14 Pfizer press release: Pfizer Completes Acquisition of Seagen)。

’039特許を巡る侵害事件と無効取消事件とがCAFCで並行して係属しており、いずれも’039特許の有効性が焦点となるはずです。この結論が両社で起きていた一連の特許紛争の終着地点となります。

Fubuki
Fubuki

まだまだ第一三共(with アストラゼネカ社)とSeagen社(Pfizer社)とのADC関連特許紛争に注目!

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