医薬用途発明に薬理データは必要か?(制吐剤事件): 東京高裁平成8年(行ケ)201
【背景】
本願(特願昭62-192553号)発明は、医薬用途発明であり、明細書中には、妊娠のむかつきおよびつわり等対して有効であると記述していたが、これら薬理効果を裏付ける実施例は記載されていなかった。
【要旨】
医薬についての用途発明においては、一般に、物質名、化学構造だけからその有用性を予測することは困難であり、明細書に有効量、投与方法、製剤化のための事項がある程度記載されている場合であっても、それだけでは当業者は当該医薬が実際にその用途において有用性があるか否かを知ることができないから、明細書に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をしてその用途の有用性を裏付ける必要があり、それがされていない発明の詳細な説明の記載は、特許法36条3項(注:昭和62年法律第27号による改正前の特許法。)に違反するものといわなければならない。したがって、「医薬についての用途発明は、特定の物質または組成物の確認された薬理効果を専ら利用するものであるから、薬理効果が薬理データ、またはそれに代わり得る具体的記載によって明細書に確認できるように記載されていることが必要である」との審決の判断に誤りはない、と判断し、原告の主張を退けた。
【コメント】
「医薬発明」の審査基準に引用されている判例(制吐剤判決)。医薬に関する用途発明においては、その薬理効果を、明細書中に、薬理データまたはそれに代わり得る具体的記載によって確認できるように記載しなければならない。判決文は特許庁の審決データベースから閲覧可能。
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