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2006.03.29 「X v. ファイザー」 知財高裁平成17年(ネ)10117

共同発明者とは ? : 知財高裁平成17年(ネ)10117

【背景】

製剤研究室長だった原告Xは、本件特許権(特許第3015677号)に係る発明「ノルバスク分割錠」と同一の形状を着想していたと主張し、職務発明について特許を受ける権利を会社に承継させたとして、特35条に基づき、会社に相当の対価を請求した。

本件特許公報中の発明者欄には、原告 X の氏名も記載されていた。

請求項 1:

「盤状の素錠の上面に錠剤の分割を容易にする少なくとも一本の溝からなる割線を設け,該上面は対向する縁部から割線へ向けて徐々に凹ませ,素錠の下面は周辺部から中心部に向けて徐々に盛り上げ,凹ませた上面および盛り上げた下面には各々曲面を形成させるが,上面の曲率半径を下面の曲率半径より小さくすることによって,周辺部より中心部の方が薄肉となるようにした上記素錠に,フィルムコーティングを施してなる,分割錠剤。」

【要旨】

「本件発明は、錠剤の形状についての着想を得ただけでは、期待する作用効果を奏するか否かが明らかでなく、実際に実験等を繰り返すことによって、初めて発明が具体化し、完成したものであるから、本件発明における発明者を認定するに当たっては、実際にフィルムコーティング実験等を実施して創作的にその構成を見いだしたか否かという観点に依拠するのが相当である。」と裁判所は言及。

実際、控訴人Xは、本件発明の着想を提案したり、伝えたりしたとの事実は認められず、真の共同発明者と認めることはできないとされた。

控訴棄却。

【コメント】

化学発明(製剤)の発明者の認定について言及した判決。製剤の発明者認定において、着想よりもむしろ実験を経た創作に重きをおいた観点が示されている。しかし、原審(2005.09.13 「X v. ファイザー」 東京地裁平成16年(ワ)14321)の判決文中に記載されている双方の主張を読んだほうが、むしろ実務には参考になる部分が多い。

発明の対価を請求するケースが増えてきたが、医薬に関する発明は通常研究グループのチームワークによって生み出されるので、単なる助言者~発明者~単なるテクニシャンの線引きをすることは困難な作業である。

しかし、将来の争いに備えるという点で、出願時の発明者決定プロセスにおいて誰が発明者なのかという合理的・客観的な証拠資料を残しておくことは、企業側としては非常に重要なことであろう。

参考:

  • ノルバスク(Norvasc): ベシル酸アムロジピン(amlodipine besilate)を有効成分とする高血圧症薬(持続性Ca拮抗薬)であり、1993年12月からその非分割錠が発売開始され、1996年以降は分割錠に一本化して販売されている。

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