貼り薬の意匠: 知財高裁平成21年(行ケ)10209
【背景】
意匠に係る物品を「貼り薬」とする被告(久光)の意匠登録第1322072号について、原告(三笠)が無効審判請求をしたところ請求不成立の審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案。
原告は、引用意匠(原告が意匠権者である意匠登録第1189179号)との類比判断の誤り(取消事由1)及び創作容易性判断の誤り(取消事由2)を主張した。
【要旨】
1. 取消事由1(類比判断の誤り)の有無について
裁判所は、
「本件登録意匠は,上記のような2色の色分けを採用することにより,上記背割線の形状を際立たせるとともに,機能的にも中央分離帯部と左右の剥離シート部の両部分を明瞭に見分けることを可能とするものであるのに対し,引用意匠の剥離シートは透明であるため,透明シートの切断線の視認性は相対的に低いものとなっているから,本件登録意匠における上記差異点は,全体として背割線を含む形状における共通性を凌駕する影響を美感に与えるものである。
そうすると,本件登録意匠と引用意匠は,上記共通点を考慮に入れたとしても,全体としては両意匠に係る物品「貼り薬」の需要者である使用者に与える印象が大きく異なるというべきであるから,本件登録意匠と引用意匠が類似するということはできない。」
と判断した。
2. 取消事由2(創作容易性判断の誤り)の有無について
裁判所は、
「左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設け,その帯状部を中央分離帯部よりも明色とした態様が本件登録意匠の出願前に公然知られていたことを認めるに足りる証拠はない。
そして,左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設けることや,その配色をどのように施すかについては創意工夫を要するものというべきであるから,本件登録意匠は,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたものとは認められない。」
と判断した。
これに対し原告は、
「医療用の物品に係る意匠の創作をする当業者(その意匠の属する分野における通常の知識を有する者)にとっては,引用意匠に日本国内に公然知られた色彩を結合して,容易に本件登録意匠の創作をすることができた」
と主張した。
しかし、裁判所は、
「本件登録意匠は単に色彩の結合(配色)のみで構成されるものでないことは前記2に説示したとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。」
と判断した。
請求棄却。
【コメント】
物品名を「貼り薬」で意匠公報テキスト検索してみると、いろいろな剥離シートの背割線の形状のものを見ることができる。
物品名を「貼り薬」で意匠公知資料テキスト検索してみると、三笠製薬のスミルテープ(公知資料番号HJ2002389200)がヒット。
一方、参考までに、久光の貼付薬ラインナップのなかに下記のものがある。
- モーラステープ
- モーラスパップ
コメント