気血水理論に基づいて開発された栄養剤: 知財高裁平成25年(行ケ)10114
【背景】
「栄養剤,消化器剤」に関する特許出願(特願2002-293904; 特開2004-123671)の拒絶審決(不服2009-14411)取消訴訟。判断された争点は進歩性。
請求項1:
A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル
B.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体
C.クルクミン
のA,BおよびCの成分を含むことを特徴とする栄養剤。
審決が認定した引用発明の内容、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおり。
引用発明の内容:
シムノールおよび/またはシムノール硫酸エステルと,大豆イソフラボンおよび/または大豆イソフラボン配糖体を含む栄養剤,消化器剤。
一致点:
A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル,
B.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体
を含むことを特徴とする,栄養剤。
相違点:
本願発明は成分Cとしてクルクミンを含むのに対し,引用発明はクルクミンを含まない点。
【要旨】
主 文
原告の請求を棄却する。(他略)
裁判所の判断
引用例1に記載された「水の科学」に関連する作用と引用例2に記載された「津液作用」とは,共に中国伝統医学の「気血水」の概念に基づくものであり,引用例1の「水の科学」に関連する作用が「血管で運ばれた機能発揮のための必要物質を更に血管のない体内各部へ供給するための手段である体内の水流を促進する作用」とされ,引用例2の「津液作用」が「水分の体外への分泌を司る器官を刺激し,体内水分の体外への分泌を促進させる作用」とされていることから,両者は同等の作用を有するものに対応することが明らかである。
したがって,引用例2に記載された「津液改善剤」は,引用例1に記載された「水の科学」に関連する作用を有する成分に相当する。
そして,引用例2には「津液作用」を有する生薬が多数列挙され,「津液改善剤」を複数用いることが記載されているから,引用例2記載の「津液改善剤」は「津液作用」(「水の科学」に関連する作用)を有する成分を複数併せて用いることが予定されているといえ,一方,引用例1にはシムノール,シムノール硫酸エステル,大豆イソフラボン又は大豆イソフラボン配糖体以外のその他の成分を混合してよいことが記載されている。
そうであれば,引用発明の「水の科学」に関連する作用を更に増強するために,引用例2に記載された「津液改善剤」を引用発明に組み合わせることとし,引用例2において実際に作用が確認されたとするカプサイシン,シナピン及びクルクミンの3種のうちからクルクミンを選択することは,当業者が容易になし得る程度のことであり,格別の創意工夫を要しない。
【コメント】
現在3つの分割出願が存在。
本件発明に関連すると思われる出願の判決事例:
これは同じく進歩性が否定された。
- 2013.03.27 「大長企画 v. 特許庁長官」 知財高裁平成24年(行ケ)10284
こちらは拒絶審決が取り消され、差戻し審決で特許となっている。
関連製品: 髪精丸α
コメント