共同発明者と認められるためには: 知財高裁平成25年(ネ)10100
【背景】
本件は、被控訴人(東京工業大学)と共同研究をしていた控訴人(東京都立産業技術研究センター)が、被控訴人に対し、被控訴人がした「生体吸収性の傾斜した多孔質複合体及びそれを用いた人工骨,並びにそれらの製造方法」に関する特許出願(特願2011-148123号等)につき、特許を受ける権利を有することの確認を求めるとともに、共同研究契約の債務不履行に基づき、損害賠償の支払を求めた事案である。
【要旨】
主 文
特許出願(特願2011-148123号)の特許請求の範囲の請求項8及び9に記載された発明について、控訴人が特許を受ける権利の共有持分を有することを確認する。(他略)
裁判所の判断(抜粋)
「(1) 共同発明者の認定について
発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいい(特許法2条1項),産業上利用することができる発明をした者は,・・・その発明について特許を受けることができる(同法29条1項柱書き)。また,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに,完成したと解すべきであるとされている(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決・民集31巻6号805頁参照)。したがって,発明者とは,当該発明における技術的思想の創作
に現実に関与した者,すなわち当該発明の特徴的部分を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指すものと解される。
そうすると,共同発明者と認められるためには,自らが共同発明者であると主張する者が,当該発明の特徴的部分を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動の過程において,他の共同発明者と一体的・連続的な協力関係の下に,重要な貢献をしたといえることを要するものというべきである。
これを本件についてみると,Aの関与の事実については,前記2で説示したとおりである。
そして,それらの事実によれば,本件基礎出願発明8及び9の特徴的部分であるビニル基導入・放射線照射は,遅くとも平成23年2月初めころまでには,本件共同研究の成果として,これを当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成され完成に至ったものと認められるところ,Aは,ビニル基導入・放射線照射の着想をしただけでなく,これを当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成するための創作活動の過程において,CやSと共に,一体的・連続的な協力関係の下に,共同研究者として,重要な貢献をしたものということができる。
したがって,Aは,本件基礎出願発明8及び9の共同発明者であると認めるのが相当である。」
【コメント】
裁判所は、「発明者とは,当該発明における技術的思想の創作に現実に関与した者,すなわち当該発明の特徴的部分を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指す。共同発明者と認められるためには,その者が,当該発明の特徴的部分を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動の過程において,他の共同発明者と一体的・連続的な協力関係の下に,重要な貢献をしたといえることを要する」と判示した。
「一体的・連続的な協力関係の下に,重要な貢献」をしたかどうかという共同発明者要件は、2010.09.22 知財高裁平成21(ネ)10067; 2008.05.29 知財高裁平成19(ネ)10037; にも判示されているコトバ。
コメント