共有に係る特許出願の拒絶審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟: 知財高裁平成26年(行ケ)10179; 平成26年(行ケ)10190
【背景】
「心血管の機能を向上する為の組成物及び方法」に関する本件特許出願(特願2002-515280号)に係る特許を受ける権利は、リボコルとバイオエナジーの共有だった。本件特許出願の拒絶審決取消訴訟が提起(平成26年(行ケ)10179)されたが、原告訴訟代理人の過誤により、リボコル(原告)の名称のみが記載された訴状が提出され、その出訴期間経過後にバイオエナジー(参加人)が上記審決取消しを求めて民訴法52条1項に基づき共同訴訟参加の申出をした(平成26年(行ケ)10190)。裁判では本件訴え及び本件申出の適法性が問題となった。
【要旨】
主 文
1 本件訴え及び本件共同訴訟参加の申出をいずれも却下する。(他略)
裁判所の判断
「(2)民訴法52条に基づく参加申出において,共同原告として参加する第三者は,自ら訴えを起こし得る第三者でなければならないと解されるから,出訴期間の定めがある訴えについては,出訴期間経過後は同条による参加申出はなし得ないものと解するべきである(最高裁昭和35年(オ)第684号同36年8月31日第一小法廷判決・民集15巻7号2040頁参照)。そして,特許法178条4項は,審決取消訴訟の出訴期間を不変期間と定めている。もっとも,不変期間であっても,参加人の責めに帰することができない理由で出訴期間内に訴訟の提起をなし得なかったときは,一定期間内に追完することができる(行訴法7条,民訴法97条1項)。
しかし,本件においては,上記(1)の経緯のとおり,本件申出は,出訴期間経過後になされたことが明らかであるところ,上記認定の経緯に照らしても,参加人において出訴期間内に訴訟の提起をなし得なかったことについて,その責めに帰することができない事由があったとは認めることができない。
したがって,参加人の本件申出は,不適法なものというほかない。(3)また,特許を受ける権利の共有者が,その共有に係る権利を目的とする特許出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し,請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に,上記共有者の提起する審決取消訴訟は,共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するべきである(平成7年判決)。
そして,前記(1)オによれば,本件訴えは,本願に係る特許を受ける権利の共有者の一部である原告のみによって提起されたものとみるほかない。
ところで,固有必要的共同訴訟において,共同訴訟人となるべき者が脱落している場合であっても,民訴法52条により脱落者が共同訴訟参加人として参加すれば,必要的共同訴訟における当事者適格の瑕疵は治癒されるものと解される。しかし,上記(2)の説示のとおり,本件申出は不適法であるから,本件においては,当事者適格の瑕疵を適法に治癒するものと解することはできない。
したがって,原告の本件訴えも不適法である。」
【コメント】
原告が主張の中で引用した「平成17年知財高裁判決」で争われた事件は、まさに本件と同様の状況が起きた事件である。この「平成17年知財高裁判決」では、参加の申出を認め、原告の訴えは参加人の共同訴訟参加により適法になったと判断しており、本判決での判断と矛盾する。「平成17年知財高裁判決」でこの点での扱いには疑問が残るが、結局結論は進歩性を否定した審決を肯定しており、どう扱おうが結論に影響はなかった。本件においても、拒絶審決理由は進歩性の欠如であり、裁判所はその点も検討して審決の判断に誤りはなかったと判断しているため、仮に、代理人による手続きの瑕疵がなかったとしても拒絶の結論は変わらなかったと思われる。
平成7年判決
- 1995.03.07 最高裁平成6年(行ツ)83
実用新案登録を受ける権利の共有者が、共同で拒絶査定に対する審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に提起する審決取消訴訟は、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟であるとした。
平成14年判決
- 2002.02.22 最高裁平成13年(行ヒ)142
- 2002.02.28 最高裁平成13年(行ヒ)12
- 2002.03.25 最高裁平成13年(行ヒ)154
共有に係る特許権について、特許異議の申立てに基づき当該特許を取り消すべき旨の決定がされた場合に提起する取消訴訟は、単独で取消決定の取消訴訟を提起することができるいわゆる類似必要的共同訴訟であるとした。
共有に係る商標権について、当該商標登録を無効にすべき旨の審決がされた場合に提起する審決取消訴訟は、単独で無効審決の取消訴訟を提起することができるいわゆる類似必要的共同訴訟であるとした。
平成17年知財高裁判決
- 2005.10.11 知財高裁平成17年(行ケ)10069; 平成17年(行ケ)10087
2名が共同で出願した特許出願について、両名に対し、拒絶査定不服審判不成立審決がなされたのに対し、訴状の記載から1名が欠落した結果、1名のみが期限内に出訴した形となり、もう1名が審決の謄本の送達から約4か月後に出訴した事案において、訴え及び参加申出の適法性を肯定した。
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