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2015.04.28 「ソルヴェイ v. 江蘇揚農化工」 東京地裁平成26年(ワ)5011

共同不法行為の関連共同性を裏付ける客観的事実関係: 東京地裁平成26年(ワ)5011

【背景】

本件は、原告(ソルヴェイ)が、「被告(江蘇揚農化工)が中国国内において製造・販売しているエピクロロヒドリンは、以下の第1および第2の工程からなるエピクロロヒドリンの製造方法:

第1の工程: グリセロールを,アジピン酸の存在下で,塩素化剤との反応に付し,ジクロロプロパノールを得る。

第2の工程: 第1の工程により得られたジクロロプロパノールの少なくとも1種のフラクションを脱塩素化水素反応に付し,エピクロロヒドリンを得る。

により製造されているから、蝶理(株)が被告製品を日本国内に輸入し販売する行為は、原告の特許権(特許第4167288号; 特許第4642142号)を侵害するものであり、被告が蝶理に対し被告製品を販売する行為は、蝶理を通じて日本国内で被告製品を販売することを目的としており、蝶理の特許権侵害行為と共同不法行為の関係にある」旨主張して、被告に対し、民法709条、719条1項ないし2項、特許法102条2項に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案。被告は、国際裁判管轄が認められないとして本件訴えの却下を求めてた。

被告は、中国国内において被告製品を製造し、蝶理に対して販売し、蝶理は、被告製品を日本に輸入し、日本国内で販売している。

【要旨】

主 文

1 本件訴えを却下する。(他略)

当裁判所の判断

「1 民事訴訟法3条の3第8号にいう「不法行為があった地が日本国内にある」として国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が日本国内でした行為により原告の権利利益について損害が生じたか,被告がした行為により原告の権利利益について日本国内で損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りる(最高裁平成13年6月8日第二小法廷判決・民集55巻4号727頁最高裁平成26年4月24日第一小法廷判決・民集68巻4号329頁参照)。そして,本件のように,原告が共同不法行為を主張する場合には,原則として,上記行為として,被告を含む共同不法行為者らの行為の関連共同性を基礎付ける客観的事実関係,又は被告がした教唆ないし幇助行為についての客観的事実関係を証明する必要があると解すべきである。」

2 本件において

原告は、共同不法行為の関連共同性を裏付ける客観的事実関係又は教唆ないし幇助行為についての客観的事実関係として、下記点を主張した。

①被告は被告製品が蝶理によって日本に輸入され日本国内で販売されることを認識していたこと
②被告は蝶理に対し日本において特許権侵害の問題が生じた場合には被告において問題を解決する旨の表明をしていること
③被告は蝶理に対し被告製品を積極的に売り込んだこと
④蝶理は日本向けの被告製品を独占的に被告から購入していたこと

しかしながら、裁判所は、

①及び②の事実は、一般的な製造業者と商社との間の国際商取引の範囲を超えるものではないといえること
③及び④の事実についてはこれを認めるに足りる証拠がなく、後者については、かえって、被告と蝶理との間の取引は独占的なものでないこと

が認められるから、これらの事実のみをもって、被告と蝶理の行為の関連共同性を基礎付けるものということはできないし、蝶理に対する被告の教唆ないし幇助行為を認めることもできないとした。

「したがって,関連共同性を基礎付ける客観的事実関係又は教唆ないし幇助行為についての客観的事実関係が証明されているとはいえず,その他本件訴えにつき我が国の国際裁判管轄を認めるべき特段の事情も窺われないから,本件において「不法行為があった地が日本国内にある」とは認められない。

3 なお,~少なくとも本件について,関連共同性の主張立証もないのに,被告による中国国内における被告製品の販売行為のみに基づき我が国の国際裁判管轄を認めることはできない。

4 以上のとおりであって,本件訴えは,我が国の国際裁判管轄が認められないものとして不適法であるから,これを却下することとし,主文のとおり判決する。」

【コメント】

共同不法行為の関連共同性を裏付ける客観的事実関係又は教唆ないし幇助行為についての客観的事実関係を証明することはできず、訴えは却下された。

一方、被告製品を日本に輸入し、日本国内で販売している蝶理に対して、原告が提起した特許侵害差止等請求事件(2014.09.11 「ソルヴェイ v. 蝶理」東京地裁平成25年(ワ)27293)では、江蘇揚農化工が第1の工程によりジクロロ プロパノールを製造していることを認めるに足りる証拠はないから揚農が ジクロロプロパノールを製造することが本件発明1の技術的範囲に属するとは認められないとして非侵害の判決が下されている。

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