イムノアッセイの連続交互プロセス: 知財高裁平成28年(行ケ)10196
【背景】
「アッセイ装置,方法,および試薬」に関する特許出願(特願2014-23320; 特開2014-130151)の拒絶審決(不服2015-12712)取消訴訟。争点は進歩性。具体的には、引用発明との相違点2(コンピュータを実装したプロセスが,本願補正発明では,「連続交互プロセス」であるのに対し,引用発明では,そのように特定されていない点)の容易想到性が争われた。
本願補正発明(請求項1):
マルチウェルプレートにおいてアッセイを実施するための方法であって,ここで前記方法は,(a)光検出サブシステム;(b)液体操作サブシステム;(c)プレート操作サブシステム,およびソフトウェアのスケジューラーへと動作可能に接続されたコンピュータを含有する装置を用い,
前記方法が,前記マルチウェルプレートの個々のウェルにおいて実施される以下のステップ:
(i)期間nを含有するサンプル添加フェーズの間に前記個々のウェルに対してサンプルを添加するステップ;
(ii)期間mを含有する放置フェーズの間に前記個々のウェル中に前記サンプルを放置するステップ;
(iii)期間pを含有する試薬添加フェーズの間に前記個々のウェルへと試薬を添加するステップ;ならびに
(iv)前記ソフトウェアのスケジューラーによって前記マルチウェルプレートの個々のウェルに対するステップ(i)~(iii)の状態をトラックするステップ,を含有するコンピュータを実装した連続交互プロセスを含有し,
ここでステップ(i)が,サンプルを添加するステップの前に前記個々のウェルのシールを穴開けするステップをさらに含有し,
ここで前記マルチウェルプレートの第一のウェルがステップ(i)~(iii)へと供され,そして前記第一のウェルの少なくともステップ(i)が完了したのちに前記マルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上の追加のウェルにおいてこれらのステップ(i)~(iii)が繰り返され,
かつ
期間n,mもしくはpの一つもしくはそれ以上が,前記マルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上のウェルにおいて,前記ソフトウェアのスケジューラーによって調整できる,方法。
【要旨】
引用発明1に引用例2に記載された技術事項を適用することについて、裁判所は、
「引用例1と引用例2(甲2)は,共にイムノアッセイに係る技術であり,イムノアッセイにおける全作業時間を短縮させるという課題は,イムノアッセイ全般の一般的な技術課題にすぎない。したがって,引用例2に記載されている,マルチウェルプレートの第一のウェルに反応開始に必要な液体を添加するステップを行ってイムノアッセイの処理を開始し,その第一のウェルでのインキュベーション期間に,前記マルチウェルプレートの一つの追加のウェルに反応開始に必要な液体を添加するステップを行ってイムノアッセイの処理を開始し,マルチウェルプレートにおけるイムノアッセイの全作業時間を短縮することを,引用発明に適用することは,当業者が容易になし得たことである。
そうすると,引用例2に記載された技術事項を適用した引用発明は,「第一のウェル」に対するステップ(ii)中に「前記マルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上の追加のウェルにおいて,」少なくともステップ(i)を行い,その後で,「第一のウェル」に対するステップ(iii)を行う,つまり「連続交互プロセス」を含有することになる。
よって,相違点2の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはない。」
と判断した。請求棄却。
【コメント】
本出願についてINPADOC patent familyを見てみると、下記日本出願群が存在しているようである。
- 優先権US 61/123,975 ⇒PCT/US2009/002244(WO2009/126303)
⇒特願2011-504004(特表2011-518323)
⇒拒絶審決⇒特願2011-504004の分割⇒特願2014-23320(特開2014-130151)
⇒拒絶審決(本願) - 優先権US 60/752,745; 60/752,513: 11/642,968 ⇒PCT/US2006/049049(WO2008/057111)
⇒特願2008-547613(特表2009-533650)
⇒特許5080494⇒特願2008-547613の分割⇒特願2012-158378(特開2012-230122)
⇒拒絶審決⇒特願2012-158378の分割⇒特願2014-148593(特開2014-211450)
⇒特許5885788⇒特願2012-158378の分割⇒特願2015-237447(特開2016-048260)
⇒審査係属中 - 優先権US 60/752,745; 60/752,513; 11/642,970 ⇒PCT/US2006/049048(WO2007/076023)
⇒特願2008-547612(特表2009-521686)
⇒特許5345854⇒特願2008-547612の分割⇒特願2012-179913(特開2013-007751)
⇒特許5845156⇒特願2012-179913の分割⇒特願2015-144598(特開2015-232568)
⇒特許6113788⇒特願2015-144598の分割⇒特願2016-200778(特開2017-026635)
⇒審査係属中
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