出願経過を参酌して「オキサリプラティヌムの水溶液」の技術的範囲を判断: 知財高裁平成29年(ネ)10009・平成29年(ネ)10023
「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」に関する特許第3547755号(本件特許1)及び「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許第4430229号(本件特許2)を有する控訴人(デビオファーム)が、被控訴人(ホスピーラ)の製造、販売する各製品(被告各製品)は上記各特許の特許請求の範囲請求項1記載の発明(本件発明1及び本件発明2)の技術的範囲に属する旨主張して、被控訴人に対し、被告各製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた事案。原判決は、被告各製品は,延長された本件特許権1の効力が及ぶものではなく、また、本件発明2の技術的範囲に属しないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。
原審:
知財高裁(第3部)は、被告各製品は本件発明1の構成要件1Cを充足せず,また,本件発明2の構成要件2B,2F及び2Gを充足しないから,その余の構成要件について検討するまでもなく,被告各製品は,本件発明1及び2のいずれの技術的範囲にも属しないと判断した。控訴棄却。
1 構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)の充足性)について
「・・・本件明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を総合的にみれば・・・本件発明1の特許請求の範囲における「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」(構成要件1C)とは,本件発明1がオキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないものであることを意味すると解するのが相当である。
・・・被告各製品は,オキサリプラティヌムと水のほか,酒石酸及び水酸化ナトリウムが添加されているものであるから,構成要件1Cを充足しない。」
2 構成要件2B,2F及び2Gの「緩衝剤」の充足性)について
「本件発明2における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるべきである。したがって,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩が添加されていない被告各製品は,構成要件2B,2F及び2Gの「緩衝剤」を含有せず,これらの構成要件を充足しない。」
知財高裁(第3部)は、延長された特許権の効力について判断した地裁判決については触れることなく、地裁では判断しなかった構成要件1Cの充足性の争点も含めて、そもそも被告各製品は本件特許発明の技術的範囲に属しないと判断して決着させた。
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