メディオンの炭酸パック特許: 知財高裁平成30年(行ケ)10033; 知財高裁平成30年(行ケ)10054
【背景】
メディオン(被告)が保有する「二酸化炭素含有粘性組成物」に関する特許(第4912492号; 第4659980号)の無効審判請求(無効2017-800050号; 無効2017-800095号)不成立審決取消訴訟。争点は進歩性。
【要旨】
裁判所は、本件発明について容易想到性が認められないとした本件審決に誤りはなく原告が主張する取消事由は理由がないとして原告の請求を棄却した。
知財高裁平成30年(行ケ)10033(特許第4912492号):
「甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,さらに,このように分けた2剤のうちの一方である,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」をあらかじめ水に溶解させて「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」に置き換える動機付けは見当たらない。以上によれば,本件発明1について,当業者が,引用発明の「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」を「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」に置き換えることを容易に想到することができたとは認められない。」
知財高裁平成30年(行ケ)10054(特許第4659980号):
「甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,さらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。また,引用発明1は二酸化炭素による血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための化粧料で,アルギン酸ナトリウムは安定な泡を生成し,二酸化炭素の保留性を高めるために配合されているのに対し,甲2文献には二酸化炭素の発生についての記載はなく,甲2文献記載の技術事項におけるアルギン酸ナトリウムは二価以上の金属塩類との反応により皮膜を形成するためのものであって,化粧料の使用目的もアルギン酸ナトリウムの配合目的も異なるものである。そして,甲1文献及び甲2文献には,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わせた場合に引用発明1における発泡性及びガス保留性を維持することができることを示唆する記載もないから,このことからも,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けがあることは否定される。以上によれば,本件発明1について,当業者が,引用文献1に甲2文献記載の技術事項等を適用することによって容易に想到することができたということはできない。」
【コメント】
メディオン・リサーチ・ラボラトリーズのpress release(2018.07.04 「炭酸パック特許に係る特許権侵害訴訟の判決のご報告)によると、メディオンは、炭酸パックに係る「二酸化炭素含有粘性組成物」の発明に関し、特許第4659980号及び特許第4912492号に係る特許権を保有しており、ネオケミア(株)らを被告とした特許権侵害訴訟(大阪地裁平成27年(ワ)第4292号)を提起していた。
平成30年6月28日に、大阪地裁において、被告らによる特許権侵害を肯定し、被告製品の製造、販売の差止めと、総額で3億3777万7287円の損害賠償金の支払いを命ずる判決が出されていた。他、メディオンの特許についてはこちらに記載がある。
関連過去記事:
- 特許4659980号に関する無効審判請求不成立審決取消訴訟(請求棄却判決): 2013.02.14 「KBC v. メディオン」 知財高裁平成24年(行ケ)10215
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