本庶佑氏及び小野薬品工業が特許権者である抗PD-1抗体等に関する特許(いわゆる「本庶特許」)の共同発明者を巡って、ゴードン・フリーマン氏(ダナ・ファーバー癌研究所)が、共同出願違反(特許法38条規定違反)を理由に日本の5件の「本庶特許」の無効を求めていた審判請求事件。
2022年5月27日、特許庁(審判合議体)は、いずれの「本庶特許」に係る発明においてもゴードン・フリーマン氏は共同発明者には該当せず、従って「本庶特許」は共同出願違反により無効とされるべきとはいえないと判断して、ゴードン・フリーマン氏による審判の請求は成り立たないとの審決を下しましたが、その審決を不服として、2022年10月1日、ゴードン・フリーマン氏は、知財高裁に審決の取消を求めて訴訟を提起したようです。
各事件の対象となっている「本庶特許」の概要は以下の表1のとおりです。発明の技術的思想は、抗PDー1抗体であるか抗PD-L1抗体であるかで分類することができます。
出訴事件番号 | 特許 | 審判番号 | 分割関係 | 本件発明の技術的思想(審判合議体の認定) |
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令和4年(行ケ)10102 | 4409430 | 無効2020-800088 | 国際出願PCT/JP2003/008420 国際公開WO2004/004771 | 本件発明1は、PD-1、PD-L1又はPD-L2による抑制シグナルを阻害して、免疫賦活させる組成物及びこの機構を介した癌治療のための組成物を提供することを課題とし、この課題を解決するための手段として、抗PD-1抗体がPD-1分子と、PD-L1分子又はPD-L2分子の相互作用を阻害することにより癌免疫の賦活をもたらし、インビボにおいてメラノーマの増殖または転移を抑制することを見出した点にあると認められる。 |
令和4年(行ケ)10103 | 5159730 | 無効2020-800089 | 分割(第1世代) | 本件発明1は、PD-1、PD-L1又はPD-L2による抑制シグナルを阻害して、免疫賦活させる組成物及びこの機構を介した癌治療のための組成物を提供することを課題とし、この課題を解決するための手段として、抗PD-1抗体がPD-1分子と、PD-L1分子又はPD-L2分子の相互作用を阻害することにより癌免疫の賦活をもたらし、インビボにおいて癌細胞の増殖を抑制することを見出した点にあると認められる。 |
令和4年(行ケ)10104 | 5885764 | 無効2020-800090 | 分割(第3世代) | 本件発明1は、PD-1、PD-L1による抑制シグナルを阻害して、免疫賦活させる組成物及びこの機構を介した癌治療のための組成物を提供することを課題とし、この課題を解決するための手段として、抗PD-L1抗体がPD-1分子と、PD-L1分子の相互作用を阻害することにより癌免疫の賦活をもたらし、癌を治療できることを見出した点にあると認められる。 |
令和4年(行ケ)10105 | 6035372 | 無効2020-800091 | 分割(第4世代) | 本件発明1は、PD-1、PD-L1又はPD-L2による抑制シグナルを阻害して、免疫賦活させる組成物及びこの機構を介した癌治療のための組成物を提供することを課題とし、この課題を解決するための手段として、キメラ、ヒト化または完全ヒト型抗PD-1抗体がPD-1分子と、PD-L1分子又はPD-L2分子の相互作用を阻害することにより癌免疫の賦活をもたらし、肺癌を治療できることを見出した点にあると認められる。 |
令和4年(行ケ)10106 | 6258428 | 無効2020-800092 | 分割(第5世代) | 本件発明1は、PD-1、PD-L1による抑制シグナルを阻害して、免疫賦活させる組成物及びこの機構を介した癌治療のための組成物を提供することを課題とし、この課題を解決するための手段として、抗PD-L1抗体がPD-1分子と、PD-L1分子の相互作用を阻害することにより癌免疫の賦活をもたらし、癌を治療できる静脈投与用注射剤となることを見出した点にあると認められる。 |
さて、免疫チェックポイント阻害因子をがん治療に応用した共同発明者として、米国では認められたゴードン・フリーマン氏ですが、日本ではどのように判断されるのか、知財高裁による判決が待たれます。
特許庁審決までの経緯は以下の記事参照:
抗PD-1抗体に関する本庶特許の発明者を巡る米国での裁判、そして日本・・・(6)
>(5)から続く 本庶佑氏及び小野薬品工業が特許権者である抗PD-1抗体等に関する特許(いわゆる「本庶特許」)の共同発明者を巡る米国での裁判で共同発明者として追加が認められたゴードン・フリーマン氏(ダナ・ファーバー癌研究所)が、共同出願違反(特許法38条規定違反)を理由に日本の5件の「本庶特許」の無効を求めていた審判請求事件において、2022年5月27日、特許庁(審判合議体)は、いずれの「本庶特許...
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