2022年9月30日の第一三共のプレスリリース「Novartis社との特許係争に関するお知らせ」によると、第一三共は、Novartis社のBRAF阻害剤Tafinlar®(有効成分: dabrafenib)に関して、2022年3月に閉鎖した第一三共の米国子会社であるPlexxikon社が保有する米国特許9,469,640及び9,844,539を侵害しているとして、Plexxikon 社が2017年8月に米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提起していた裁判において、
同裁判所は、Novartis社がPlexxikon社に対して、
- 177.8百万ドルの損害賠償金
- 同特許存続期間中のTafinlar®の米国売上に対して、9%のロイヤルティ
を支払うべき
と判断したとのことです。
なお、Novartis社の故意侵害は認められませんでした。
2つの特許のうち、米国特許9,469,640のクレーム1は以下のとおりとなっています。
Novartis社のウェブサイトに掲載されている「Full Year 2021 Product Sales」によると、Tafinlar+Mekinistとして、Net Sales 1,693百米ドルとなっています。
コメント
出願2008年7月(優先日2007年)、登録2016年10月なので訴訟タイミング2017年8月に違和感ないと思いますが、Tafinlar®(dabrafenib)の物質出願が2009年5月(最先優先日2008年5月)なので、上市成功したとはいえ当時GSK?引受けたNovartisも出願直後から10年以上生きた心地がしなかったかもですね
https://twitter.com/tokkyoteki/status/1576473340692160513?s=20&t=bRLJmL5s0rmlVqcaPlN3Vg
最後まで記載要件を審査官に指摘されたようですし本当に権利化頑張ったと思います。これ頑張った知財部員はボーナスですね。この頑張りが無ければ今回の勝ち得たものも無かったわけですしね
https://twitter.com/tokkyoteki/status/1576514240117997570?s=20&t=bRLJmL5s0rmlVqcaPlN3Vg
Orangebookで確認したが、その2つの特許は同じBRAF阻害剤ゼルボラフ®(ベムラフェニブ(Vemurafenib))にリストされていない。クレームのL1部分が、ゼルボラフの有効成分ベムラフェニブとは異なることからもゼルボラフ®(ベムラフェニブ)を保護する特許ではない。
Fubuki様
これ、米国外の状況はどうなんですかね。米国の特許で侵害なら同じ特許を国際出願した他の国でも特許にも引っかかりそうですよね。
Tafinlar + Mekinistの2021の売り上げは米国が606mil USDで、他の地域の合計1087mil USDの方が大きい。序盤からGSKの動向を認知していたなら主要市場の国も特許化してあるのではないでしょうか。
コメントありがとうございます。
対象となった米国特許9,469,640について、日本の特許ファミリーでは2016年の分割出願から、最後までL1=bondの点について審査官から拒絶を受けていましたが解消され、2018年に特許6456900が成立しました。dabrafenibは特許クレームの範囲内のように見えます。下位クレームもdabrafenibに焦点を当てたと感じられる構成に見えます。
欧州特許ファミリーではEP2170830B1が成立していますが、審査の過程で審査官からの拒絶理由(先行出願公開D2:WO2007/002325A (PLEXXIKON, 4 January 2007))を受け、2011年11月23日付でL1からbondを削除する補正がなされ、2014年に登録に至りました。その後、分割出願はされていないようです。従って、欧州ではdabrafenibは特許クレームの範囲外のようです。何故かは分かりませんが、dabrafenibを取り込もうとする意欲はその経過を見ても感じられません。
欧州審査で先行技術D2として挙げられたWO2007002325がvemurafenib (ZELBORAF)に関する物質出願で、その特許ファミリーであるUS7863288やUS8143271はvemurafenib(ZELBORAF)のorangebookに掲載、EP1893612B1はvemurafenibでSPC、JP5007304B2はvemurafenibで特許期間延長されていますね。
ありがとうございました。確かに、L1が直接結合がクレーム削除されたらdabrafenibは引っかからなくなりますね。直接結合したタイプは実施例になかったんでしょうか。
ちなみに臨床効果はdabrafenib+Trametinibの方がPlexxikonからRoche/中外にライセンスされたvemurafenib+cobimetinibよりも好評のようです。
私も調べてて見つけたのですが、trametinibの発明者は日本の研究者(酒井さん)だったのでビックリしました。
今年の第一三共の知財はエンハーツでもSeagenに勝ったし、大活躍でしたね。
直接結合したタイプは実施例に無かったのかどうか、明細書を隅まで見ていないのでわかりませんが、EP2170830B1の明細書は、こちらのURLで御覧になれます。
https://data.epo.org/publication-server/pdf-document?pn=2170830&ki=B1&cc=EP&pd=20141015
例えば、日本では、審査官は、拒絶理由通知(起案日平成29年8月7日)にて、
「「実施例2」という部分([0159]~[0163])には、L1が結合である態様の一般的で例示的な製造方法が記載されるのみである。たしかに当該方法によって製造されうることは予測できるが、化学物質の製造は、客観的に示すデータがなければ実証することはできないから、当該記載のみでは、L1が結合である化合物が実際に製造されたといえないことに変わりはない。・・・L1が結合である式Iaの化合物がRAFキナーゼ阻害作用を有することを示せば、本願の拒絶理由は解消しうるが、本願明細書にはL1が結合である式Iaの具体的な構造式が示されていない」
と述べていますので、ご参考になるかもしれません。
また、日本発の医薬品や日本企業(知財)が元気なことはとても嬉しいことですね。
2022.10.28 第一三共 press release: 当社子会社の米国特許侵害訴訟(控訴)に関するお知らせ
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/ir/pdf/20221028/20221028_%E5%BD%93%E7%A4%BE%E5%AD%90%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AE%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E7%89%B9%E8%A8%B1%E4%BE%B5%E5%AE%B3%E8%A8%B4%E8%A8%9F%EF%BC%88%E6%8E%A7%E8%A8%B4%EF%BC%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B_Final.pdf
Novartis社のBRAF阻害剤 Tafinlar®に関して、第一三共米国子会社 Plexxikon Inc.(以下「Plexxikon 社」)が米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提起していた特許侵害訴訟について、2022年9月29日(現地時間)、Plexxikon社が所有する特許が有効であり、Novartis社が当該特許を侵害していること等を認める地裁判決が下されていましたが、その後、2022年10月27日(現地時間)、Novartis社が米国連邦巡回区控訴裁判所に対し、当該地裁判決を不服として控訴したとのことです。第一三共は、Plexxikon社の主張を認容した地裁判決は妥当であると考えており、控訴審においてもPlexxikon社の主張の正当性が認められるように対応していくとのことです。
ノバルティスと第一三共で264億円で和解に至ったみたいですね。直結の実施例がなかったのに恐るべしマーカッシュクレーム :)
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