2022年2月28日、小野薬品工業株式会社(以下「小野薬品」)のプレスリリース(アストラゼネカ株式会社に対する特許侵害訴訟の提起について)によると、小野薬品が権利を有する抗PD-L1抗体に関する特許(特許第5885764号、特許第6258428号)に基づき、「イミフィンジ®」(一般名:デュルバルマブ)を販売しているアストラゼネカ株式会社(以下「アストラゼネカ」)に対し、2月28日に特許権侵害行為に対する差止請求及び損害賠償請求訴訟(訴額約320億円)を東京地方裁判所に提起したとのことです。
なお、小野薬品は、当該治療が患者さんの生命救済に関わることを考慮して、訴訟外においてでもロイヤルティなどを含む適切な対価を支払う旨の合意がアストラゼネカとなされれば、「イミフィンジ®」の販売差止は求めない方針とのことです。
アストラゼネカが販売する「イミフィンジ®」は、ヒト型抗PD-L1モノクローナル抗体デュルバルマブ/durvalumab(遺伝子組換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤で、2018年7月に、「切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」の効能・効果にて承認(日本)されました。2020年8月には、「進展型小細胞肺癌」の効能追加が承認されています。
小野薬品が権利を有する抗PD-L1抗体に関する特許第5885764号及び特許第6258428号は、いずれも本庶氏との共有特許です。別件ですが、現在、ゴードン・フリーマン氏が無効審判を請求しており、その発明の帰属に関して争っていると思われます(記事「抗PD-1抗体に関する本庶特許の発明者を巡る米国での裁判、そして日本・・・(5)」参照)。
特許第5885764号
PD-1の免疫抑制シグナルを阻害する抗PD-L1抗体を有効成分として含む癌治療剤。
特許第6258428号
PD-1の免疫抑制シグナルを阻害する抗PD-L1抗体を有効成分として含む、癌治療用の静脈投与用注射剤。
この紛争で和解金等を得たとした場合の配分も、本庶氏との間では、以下の時の和解契約か何らかの取り決めの下で、さすがに整理済みなのだと思われる。
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