2018年2月21日、東和薬品より「炭酸ランタン水和物に関する特許権について」の謹告文が掲載されました(参照: 日刊薬業website: 【謹告】炭酸ランタン水和物に関する特許権について)
東和薬品は、2018年2月15日に、炭酸ランタン顆粒分包250mg/500mg「トーワ」の承認を取得しており、粒度を特定の範囲とする炭酸ランタンの7~9水和物に関する日本特許(第6225270号)を保有しているとのことです。
請求項1:
90%積算径(D90)が70μm以下である、La2(CO3)3・xH2O(式中、xは7~9の間の数字を示す。)で表される炭酸ランタン水和物からなる、高リン血症を治療するための医薬(ただし、懸濁剤を除く)。
先発薬はバイエルのホスレノール(一般名:炭酸ランタン水和物(Lanthanum Carbonate Hydrate)、分子式: La2(CO3)3・xH2O(x=主として4))。日本では1998年にシャイア社により第Ⅰ相臨床試験が実施され、その後、2003年にバイエルが国内における開発及び製造販売権を取得、「透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善」の効能・効果でホスレノールチュアブル錠が2008年10月に、また顆粒分包が2012年に承認され、さらに2013年8月に「慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」の効能・効果として適応拡大、ホスレノールOD錠が2017年2月に承認。再審査期間は2016年10月15日で終了。
シャイア社が保有する炭酸ランタン水和物に関する特許(第3224544号)は、特許権存続期間延長(2009-700005; 2009-700006; 処分の対象となった物: 炭酸ランタン水和物(販売名:ホスレノールチュアブル錠250mg、500mg)/処分の対象となった物について特定された用途: 透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善)により存続期間満了日は2021年3月19日となっていますが、沢井製薬が特許無効審判を請求し、現在審決取消訴訟が知財高裁に係属しているようです(平29行ケ10171)。
請求項1:
高リン酸塩血症の治療のための医薬組成物であって、以下の式:La2(CO3)3・xH2O{式中、xは、3~6の値をもつ。}により表される炭酸ランタンを、医薬として許容される希釈剤又は担体と混合されて又は会合されて含む前記組成物。
謹告文からすると東和薬品はシャイア社の特許権を回避した水和物で承認を取得したと考えられます。2018年2月15日には東和薬品だけでなく多くのジェネリックメーカーがホスレノール後発品の承認を取得していることからすると、それらメーカーは、沢井製薬と同様にシャイア社の特許無効を理由に非侵害であるとの立場であるか、東和薬品と同様にシャイア社特許を回避した水和物で承認を取得したか(であっても東和薬品特許との問題もあり得る)と思われます。
参考:
薬食審査発0616第1号(平成23年6月16日)「異なる結晶形等を有する医療用医薬品の取扱いについて」では、異なる結晶形等を有する医薬品の承認申請(審査)上の取扱いについての基本的考え方が示されている。
「結晶形又は水和物/無水物の違いは、塩違い(酸塩又は金属塩)又はエステル違いの場合と異なり、化学構造の基本的相違を伴わないことから、一般的名称が異なる場合にあっても、承認申請(審査)にあたっては、原則として、次のとおり取扱うものとする。
既承認医薬品の原薬と結晶形等が異なる原薬から成る製剤を新規に承認申請する場合には、既承認医薬品と同一の有効成分から成る製剤を申請する場合と同様に取扱うこととする。」
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